「韓国では全然違う観点で見られているので要注意(内容の核心につき言及あり、ネタバレ注意)」コンクリート・ユートピア yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国では全然違う観点で見られているので要注意(内容の核心につき言及あり、ネタバレ注意)
今年8本目(合計1,100本目/今月(2024年1月度)8本目)。
ネタバレなしで投稿したら問題になってしまったので、ネタバレありで投稿します。
この映画、よく見ると、いきなり「登記がなくても我が家なんだぞ」等の「登記」といった語句が飛んでくるので、韓国民法ネタ(韓国民法186条、日本民法177条相当。不動産登記関係)か?ということは資格持ちにはある程度ピンときますが、そこに気が付くかどうかで相当判断が分かれる特殊な作品です。
実は韓国民法は韓国の成立後(1948年後)、それまでの日本民法を若干変更したものが取り入れられていて、不動産登記関係はそもそも制度が違います。また、日本ではマンションなどの賃貸借は「債権」に分類されますが、韓国では韓国民法303条以下が規定する「チョンセ権」という物権になります。これは、購入時の金額の5割~7割をオーナーに提供して退去時に返却する代わりに、その頭金を運用して得られる利益が家賃と相殺されるシステムです(日本の賃貸借に似るが、債権ではなく物権である点が異なる)。
ところが韓国ではこのチョンセ権は韓国の不動産登記法上、登記されうるものですが、日本のそれ(日本では賃貸借)がほぼ登記されないのと同じように、登記されないのが普通です。その場合、日本の賃貸借と「扱いはほぼ同じ」になります(制度が異なるに過ぎない)。
しかし上記に書いたように「頭金を活用して得られる利益」とあるように、これを詐欺的に私的流用したり勝手にギャンブルなどに流用する類型がいくつか存在し(あるいは突然オーナーが変わっていたりというもの)、それによるトラブルが非常に多く、韓国では2020年にこれらについてある程度の規制がかかるようになりましたが、日本と違い借地借家法等にあたる法による「借り手有利な事情」になっていない韓国では「家の賃貸借トラブル」が非常に多く、この映画も実はそれを「災害」として述べたものです。
※ こうしたことは韓国公式サイトやKBS(韓国の国営放送。日本のNHKにおよそ相当する)などで調べると実はすぐにわかります。
この理解の有無によって、日本では時期的に能登半島の震災もあったことから、この映画の述べる「災害」が何なのか映画内では描写されておらず(突然地震が起きるが、そこだけで起きることが不自然)、こうした点の理解まで求めようとすると一定程度法律系資格を持っている等でないと無理で、極端に高い知識が求められるかな…といったところです。
※ よって、いわゆるコリアタウンがあるような大阪で開業している行政書士と(不動産登記は扱えないが、コリアタウンの性質上、相談を受けることがあるので、韓国のこの制度についても知っていないと理解ができなくなる)、不動産登記を扱う司法書士の二重論点ということになります。
この映画はこうした部分の説明が極端に少ない…というか、ヒント描写が実質「登記されていないだけで我が家なんだぞ」だけですから(ここからこの家は購入した家ではないことがわかります。購入時の登記は韓国民法では義務だからです(韓国民法186条/日本では「当事者では有効だが第三者に対抗するには登記しろ」で177条)。
こうした点の説明不足があいまって本映画の理解はかなりの差が出るのではなかろうか…といったところです。
採点は以下の通りです。
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(減点0.5/上記の理解にたどり着くことが困難)
・ 正直、韓国公式サイトや韓国のニュースサイト他を見て事前にこのことを知らないと理解が???な展開になってしまうのが厳しく、かつ日本民法にない「チョンセ権の理解」まで問われるので極端に厳しい印象です。
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