「善と悪の区別は不可能」コンクリート・ユートピア サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
善と悪の区別は不可能
〈パラサイトに続く、韓国映画の大傑作〉って文言、幾度となく見てきたが、本作がようやくそのキャッチフレーズに当てはまる作品だったと思う。最近ちょっと調子悪かったけど、久々にらしい映画で、個人的にはめちゃくちゃ刺さった。やっぱりこの国の社会派ドラマはピカイチだな。
ハリウッドにも対抗出来るほど圧倒のVFX技術。
謎の自然災害の全貌が顕になる訳では無いんだけど、だからこそ良いというか。ひとつに絞っていないから、風刺映画としては上手い。マンションが一気に倒壊し、たった一つだけ残るまでの流れはものすごく怖い。パラサイトでは、貧富差を高低差によって表していたが、本作では顔面にあたる光の量で体現している。陰と陽のコントラストがとてつもなく美しい。その人に潜む闇と抱く希望の光。映像だけ見ていても分かる作りは、これぞ映画という感じがしてすごく好き。
社会問題や人間の心理を問う重厚感のあるストーリー。
イケメン俳優として大活躍していたイ・ビョンホンは、絶望的な状況で住民の代表となった男をものすごい熱量で怪演。登場した段階から只者じゃない雰囲気を出していたけど、後半になるにつれて恐ろしすぎて、マジで全身が震えてしまった。一方、現在イケメン俳優として若者で大人気のパク・ソジュンも、これまでのイメージとはガラリと違う演技を見せてくれた。2人とも闇に足を踏み入れてしまうまでの表情が、とても演技とは思えず、いい意味で気持ち悪かった。
危機的な状況に立たされた時、人々はどんな行動をするのか。生きるために必死で、自分の身を守るためになんでもする。非道なことに思えるが、それが生き物の性、本能であることも間違いない。でも、人々が堕ちていく姿は見ていて苦しい。ツッコミどころは多数あるものの、ものすごく考えさせられるし、テンポもよく、個人的には大満足。新年一発目の新作としては、かなりの好スタートでしょ。