劇場公開日 2024年1月5日

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「極限状態で尽きることのない絶望」コンクリート・ユートピア うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5極限状態で尽きることのない絶望

2023年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

災害後、救助のあてもなく自力でサバイバルせざるを得なくなった一棟のアパート(日本でいうと団地やマンションの規模)の住人達の団結と崩壊を描くスリラー。
建物や道路の崩落シーンや倒壊した建物が背景に映り続ける場面が多いので、苦手な人は注意が必要かも知れない。

アパートの周囲はすべて瓦礫で、通信も生活インフラも途絶した状況に加え、救助の兆しも見えないという絶望的な設定は日本のメジャー作品にはそうそう描けないのではないだろうか。

SNSに赤裸々に報告される災害時の避難所での「美談ではない」体験を思うと、劇中の被災者同士のトラブルを一概に誇張だとは思えなかったし、多数決によって潰される小さな声、「非常時だから」という免罪符がエスカレートする恐怖、優先順位をつける責任など、いつ大規模災害に見舞われてもおかしくない日本に住む身としては人間の善性が試され続ける物語をエンタメとして割り切れない瞬間が多々あった。

目まぐるしく佇まいが変貌していくヨンタクを筆頭に、住民達の心にのしかかる過去やバックグラウンドを観客だけが知っているという構成が劇中の状況のやるせなさを際立たせており、よくあるパニック作品やスリラー作品の枠に留まらせない作りこみを感じた。物語のどこに希望を見出すかが、観客によって変わってきそうな作品である。

本国では夏に公開され、日本では劇中と同じ真冬の公開。劇中の寒さが想像しやすい時期の公開となった。

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うぐいす