「悪くはないけど原作の魅力を1%も表現出来ていないのが悲しい」映画 マイホームヒーロー pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはないけど原作の魅力を1%も表現出来ていないのが悲しい
ここまで87件のレビュアー様のうち原作読了の方8名。読了の方は私と同じ理由で低評価気味だと分析しました。
原作と映画は別物、、、だと、割り切っているつもりではありますが。
あーりーまーすーがー!
でもね。映画が原作の素晴らしさを100分の1すら表現出来ていない場合はちょっとどうなのでしょう。
この映画の出来が悪いわけではありません。
しかしながら、原作の「マイホームヒーロー」という作品の凄さ、素晴らしさはまったくこんなもんじゃないんです。原作の方が100倍以上面白い。ヤンマガ史上に残る名作だと思います。
(マガジンコミックスのweb配信システム「マガポケ」では100倍どころか1万倍面白い!と言っている読者多数)
ドラマやアニメは未視聴ですが、本作冒頭のダイジェストを観た限りではドラマの方はまだこの映画よりは原作に沿った構成にはなっているようですね。
でね。原作の第一部完結までお読みになってらっしゃらない79名の方々の評価は「さもありなん」と思わせられるものばかりで非常に悲しいのです。
この映画だけを観たらそういう感想になりますよねぇ。
そしてきっと「原作」もこの映画から受ける印象に似た作品だと思ってしまわれますよねぇ、、、(涙)
「鳥栖哲雄という人物の凄さと魅力」をこの映画はまるで表現出来ておりません。(佐々木さんの演技は素晴らしいんです。脚本・構成の問題ですね)
哲雄はダークヒーローなんかじゃないです。延人を殺さなかったら零花は99.9999%延人に殺されていました。
状況的に正当防衛なシチュエーションにはなりきっていませんが、警察に任せていたら確実に零花の命はなかった。
哲雄にはあの選択しか方法はなかったんです。
その後、半グレ組織から家族の命を守り続ける為にギリギリの選択をし続けるしかなかった哲雄。その凄まじい苦悩と、平凡な一介のサラリーマンに過ぎない彼が推理小説マニアの知識を駆使して難局を次々と乗り切っていく緊迫感。
そもそも延人が零花に近づいたのは「歌仙さんの実家資産目当ての計画的犯行」であり、清純で初心(ウブ)な18歳少女が騙されてしまうのは仕方ないのです。
それに「10億円」って一体なんなんですか!原作にそんな設定はありませんよ!10億円を持ち逃げするなんておかしな行動を哲雄に付与しちゃったら、鑑賞者は哲雄を精神的に擁護出来なくなるでしょうよ。
「家族を守る為なら何をしてもいいのか?(否、許されるはずがない)」って論調のレビュアー様、少なくありませんよ?
嗚呼!原作までがそんな作品だと思われてしまうのが悲しいー
哲雄ってそんな奴じゃないんです。
警察に通報したところで、事件が起こる前には警察は動かないですよ。だから小沢くん(本作では大沢)のお父さんは殺されたんだし。
哲雄は家族の命を守る為だけに、本当にギリギリのギリギリのところまで追い詰められて、それでも知識と知恵を駆使して苦しみ抜きながら家族の命を繋いでいくんです。
本当に「ヒーロー」なんですよ、お父さんは。
窪さんだって、この映画ではなんかただの強そうなキャラクターに過ぎないし、志野に至っちゃただの半端な悪い奴じゃないですか。
志野は整形後の顔だからなのか、やたらサイコパスっぽく描かれているし。
(原作愛読者は、つい窪には「窪さん」ってさん付けしちゃいます。窪さんこそダークヒーローですね。彼も原作では非常に魅力的な悪役です。志野は本来、物腰柔らかで万人から好かれる超絶巧みな話術の持ち主)
原作愛読者は第一部完結までにすっかり哲雄が大好きになっています。
普通の漫画や小説って必ずしも主人公を好きになるとは限らず、敵役や準主役の方が人気が出ることもあるじゃないですか。しかし、マイホームヒーローに限っては哲雄が嫌いな読者っていないだろうと思います。(哲雄がアホだと思う読者もいない事でしょう。)
だから「七年後」の第二部が始まった時にはみんな喜んだ。まだ暫くは哲雄の物語を追いかけていけるのだ、と。
この映画は第一部後半と第二部に登場するシーンを上手く繋ぎ合わせて構成されています。
だけど、まるで別物。まったくの別ストーリー。
ここまでまるっきり話を作り変えてしまうならば、もう「マイホームヒーローの映画」じゃなくていいじゃん?
原作への誤解を広げるだけ(哀しすぎる)
明の誕生だってね。「お父さん頑張ったのね」じゃないんですよ。ちゃんと理由がある。明が生まれなかったら哲雄は自ら命を絶っていてもおかしくなかったんです。
原作第二部は現在進行形で連載中。毎週が非常に楽しみです。
この映画のラストと同じにはなって欲しくない。哲雄と鳥栖ファミリーには本当に本当に幸せになって欲しいです。
(あ、ちなみに第二部で哲雄が物語終盤に窪と闘う事は原作では「あり得ない」です。まぁ闘ってはいるんだけどそれは回想シーンとしてなんで)
もしこの映画を観て原作に興味を抱いた方がおられたら、是非お読みになって頂きたいと思います。(今ならマガポケで無料でかなりの話数まで読めますよ)
※今、皆様のレビューを熟読してWikipediaでは3部扱いになっていると知りました。
私のレビューではwikiの第一部・第二部を合わせて第一部、wiki第三部(7年後)を第二部として書いています。
(Wikiの第一部・第二部は同じ時間軸なので初読の際に分ける必要性を感じませんでしたので)
衝撃的なレビューでした。
10億の件は原作にはなかったのですね!?更に原作はまだ完結してないだと!?
…なるほど。結構安直なラストだったのだなぁと感じ、10億の隠し場所以降、特に感じてた違和感はソレだったのか。合点がいきました。