劇場公開日 2024年3月8日

「それなりの緊張感は味わえる」映画 マイホームヒーロー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0それなりの緊張感は味わえる

2024年3月10日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

コミック原作のテレビドラマ「マイホームヒーロー」の完結編となる劇場版。原作未読、ドラマ未視聴ですが、TVerでドラマのダイジェストを観ることができたので、それをサクッと観てから鑑賞してきました。

ストーリーは、娘・零花へ暴行を加えようとした彼氏を殺害した会社員・鳥栖哲雄が、彼氏が属していた半グレ犯罪組織からの追及をなんとか切り抜け、平和な生活を取り戻した7年後、哲雄が殺して埋めた死体が発見され、死体とともに消えた10億円の行方を追う犯罪組織のボス・志野寛治に目をつけられた哲雄が、再び命懸けで家族を守る姿を描くというもの。

本編中にもおさらいシーンがあり、初見でもストーリーはだいたいわかると思います。でも、人物相関をつかみやすかったり回想で何度かドラマのシーンが登場したりするので、事前にダイジェストだけでも観ておいたほうがより楽しめると思います。

ドラマでは、家族を守るために殺人を犯した哲雄が、趣味の推理小説の知識を生かして、犯罪組織を相手に頭脳戦でギリギリの状況を切り抜けていく姿が見どころとなっています。本作でも序盤から、意味深なメール、娘のなにげない一言などで、哲雄がじりじりと追い込まれていく感じがとてもいいです。また、志野のいかれた感じの追い込みも見応えがありますし、安元刑事の洞察力と直感もうまく機能して、ほどよい緊張感を味わえます。

しかし、中盤、観念した哲雄が全てを語る決心をしてから雲行きが怪しくなります。まずは、安元刑事の殺害。大東さん演じる刑事が手引きしたとは言え、署内であんなことが起きるのか、その後もあの刑事は普通に勤務できるのか、ちょっと疑問でした。殺し屋の窪と警察を鉢合わせさせるシーンも、踏み込んだ刑事が窪に撃たれるのを待っているかのようだし、窪もわざわざ自分の銃を置いて上着を脱いで、暴発を受ける準備万端に見えました。田字草の登場のご都合主義には目をつぶるとしても、彼の行動は解せません。哲雄の言葉から、作戦には第二段階があったように思えたのですが、彼が作戦を簡単に放棄した理由がわかりません。そのせいで、哲雄はのこのこ戻ることになり、事態は悪化します。この間、到着したはずの警察も全く現れません。

また、間島の絡みもなんだか不自然に見えました。関わりたくないと言いながら、めっちゃ関わってるし、自分を嵌めた哲雄の作戦に乗る理由もあるにはあるのですが、イマイチ釈然としません。キャスティングされた高橋くんをカッコよく描きたかっただけではないかと思えます。海辺の小屋でのシーンも、早く火をつければいいのにつけないし、発煙筒のくだりも長いし、志野も早よ撃て!って思っちゃいました。おまけに、火がついてもすぐに小屋から出ないのも疑問。てか、刑事がそんなことしていいの? あなた犯罪許さないんじゃないの? これは正当防衛の範疇? っていろいろ考えちゃいました。結果、死んでなかったからよかったですけどね。いやもう終盤はツッコミ祭りで、感動に結びつかなかったです。とはいえ、ストーリーの骨子はおもしろいので、細かいところを気にしなければ楽しめると思います。

主演は佐々木蔵之介さんで、家族のために奮闘する哲雄を好演しています。脇を固めるのは、齋藤飛鳥さん、木村多江さん、高橋恭平くん、宮世琉弥くん、津田健次郎さんら。中でも津田さんのイカれっぷりは最高です。

今回は上映前に舞台挨拶中継がありました。和気藹々とした雰囲気はよかったですが、上映前ということで、内容や撮影に関する話はなにも聞けず残念でした。唯一、監督が「実は血が苦手」というところだけが楽しかったです。

おじゃる