「あの素晴らしい音楽をもう一度」トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代 LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)
あの素晴らしい音楽をもう一度
もう何年も訪れてはいませんが、僕がカラオケに行った時に最初に歌うのはサディスティックミカバンドの「タイムマシンにお願い」に決まっています。本作は、フォーククルセダースでデビュー以来、様々な音楽分野を縦横に駆け抜けた加藤和彦さんの半生を辿るドキュメンタリーです。
フォークルの「帰って来たヨッパライ」は、当時我が家でも大評判になり、その年の年末には、親に頼んで買って貰ったレコードを掛けながら家の大掃除していたのをよく覚えています。でも本作によると、レコードが発売になったのは1967年12月25日ですから、年末に聞いていたと言う事は発売直後に買ったということです。少なくとも関西はそれほどに沸き立っていたのです。それからの「悲しくてやりきれない」「水虫の唄」「イムジン河」「青年は荒野をめざす」などは今も歌う事が出来ます。
ところが、フォークルは間もなく解散してしまい、加藤和彦さんはやがてサディスティックミカバンドへと進展して行きました。このバンドは、ベースが小原礼さん、ギターが高中正義さん、ドラムが高橋幸宏さんだったのですから、今思えばとんでもないオールスター・バンドだったんですね。本作でも語られていますが、それほどに加藤さんは音楽的才能を見抜く力があり、また、才能ある人が集まる魅力をご自身が持っていたのです。
更に、フォーク時代の泉谷しげるさんの名曲「春夏秋冬」をプロデュースし、デビュー以来の竹内まりやさんの曲を書き(「不思議なピーチパイ」も加藤和彦さん作曲だった)と「知らなかったぁ」が続きます。
などなど、私生活にはあまり踏み込まず音楽家としての加藤和彦さんの半生を、ご自身のインタビュー映像は最小限にして周りの人々の声だけで構成した作りが見事でした。聞く曲聞く曲が僕の思い出に重なり、ラストシーンの「あの素晴らしい愛をもう一度」では立ち上がって一緒に歌いたくなりました。合唱して合掌。