「もう少し踏み込んだ描写が欲しかったが、今週のおすすめ以上。」極限境界線 救出までの18日間 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
もう少し踏み込んだ描写が欲しかったが、今週のおすすめ以上。
今年361本目(合計1,011本目/今月(2023年10月度)26本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
「カンダハル」という語はこちらの映画でも実は登場します。今週はカンダハル(人口65万人程度)祭りなのでしょうか…。
最初に「実際にあった出来事をモチーフにしているがあくまでもフィクション」ということは強調されます。この点、この映画が描く対象がどうしてもセンシティブな部分がある点からきているものと思います。
結局「実際にあった出来事」をテーマにしているため(あるいは史実も参照にしているため)あることないこと描くことはできず、一種のドキュメンタリー映画的な要素も少しですがあります(お笑いシーンといったものはほぼほぼないです)。また、映画だけを表面的に見ると、「韓国の軍隊(自衛隊)はすごいんですよ」みたいな自国を自慢するような展開にも見えますが、確かにその点は「一部において」感じられるものの、韓国側の立場、タリバン側の立場ともにほぼ半々に描かれており、一方的に「タリバン=悪」やもっと悪い「イスラム教=悪」といった描き方になっていない点に好感が持てました。
ただ一方で、多くの方が気にされるであろう点について、やはり法律系資格持ちはやはり気にする点があるわけであり、この点はそこに関する描写や説明を入れてほしかったです。
採点は以下を気にしたもの(主に憲法論)ですが、0.3か0.2か迷って0.3の切り下げ4.5という扱いですが、4.5か5.0かというのはあまり大きなところではありません(というか、0.1単位で評価できるようにしてほしいです…)。
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(減点0.3/被害者たちが「この時期に」現地にいっていたことについての考察論)
まず、この映画で冒頭に描かれる「特定の宗教」は実際に存在する宗教で、日本でもみられますが、韓国のほうがもっと多く見られます(韓国映画では気が付かずに登場しているケースすらある)。
一方で日本の憲法でいえば、信教の自由(20条)や国外移動の自由(22条の2)が該当するように、「どんなに危険な場所であろうと」憲法で保障されたことを否定することはできず、その2つは韓国憲法においても明記されているものです(韓国憲法14条、20条)。
つまり、「憲法が最高法規である国」においては、いかにある地域が危険だと認識されていても、その憲法が定める諸権利を果たすために行動すること「それ自体」を妨げることは誰にもできず(「行かないで」とお願いすることはできるが、実際に実力をもって制限すると問題になる)、「最高法規を守ること」と「危険な国に行かないことで、ひいては国家に迷惑をかけないようにする」という2つがクロスする論点がこの映画にあります。この「国家に迷惑をかけないようにする」も抽象的で、実際に「正当な理由もなく働きもせずすぐに生活保護を求める」といった積極的なケースや、本映画のように「積極的なものと消極的なものの折衷的なもの」、さらに実例はちょっと思いつきませんが「消極的に迷惑をかける」類型の3類型あるところ、「国民は自国に協力しなければならない」などという規定はどこにもないので(日韓とも)、特に「折衷的ケース」や「消極的ケース」において、「憲法で定められた自由」と「そこにはいかないで」のどちらを優先するか、という一種の憲法論について、ある程度掘り下げた考察が欲しかったです。
※ 日本においては、信教の自由(20)は最大限に守られ、よほどのことがない限りこれが侵されることがありませんし(宗教法人法の解散は関連はするが、別の話)、海外旅行の自由の制限も、数例しか判例がなく(しかもソ連があったころの冷戦時代の判例なので、今どれだけ通用するのか怪しいものもある)、日本は「できるだけいっては欲しくはないけど、でも憲法論の考え方で考えれば行くといわれたら止められません」という考え方に基本的には立ちます(戦後間もないころの判例の一部を除く)。
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