「確かに愛はある」隣人X 疑惑の彼女 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
確かに愛はある
「福田村事件」に対する、現代のアンサー映画。集団心理の恐怖という、同様のテーマを扱っているが、サスペンスとしてはイマイチだし、人間ドラマに関しても気になる点がいくつか。演出がどうも淡白で古臭い。面白いけど、なんだかスッキリしない終わり方でした。
本作、ベストアクターは酒向芳。
どんなに酷い映画でも、この人の演技だけは印象に残る。昨年の「それがいる森」の村長なんかもめちゃくちゃ良かった。今回の酒向芳はXを疑われる、上野樹里の父親役。何かに取り憑かれたように、重い過去を背負っているのが目に見えてわかる。泣き姿なんかは、とんでもなく胸が締め付けられる。愛があればそれでいい。社会の地位や名誉なんていらない。綺麗事のように思えるその文言を、体を張って表明した柏木父がすごくカッコよかったし、同時にその姿を見てコロッと意見を変える世間がとんでもなく恐ろしくなった。
記者や世間の人々に共感させるような演出があれば、本作はより深くて考えさせられるものになっていたと思う。あまり別の作品を挙げるのは良くないが、同様のテーマを扱っている「福田村事件」は観客の感情を動かすのがめちゃくちゃ上手かったんだなと改めて感じた。それか、思い切って記者に共感度ゼロパーセントにした方が、いい意味で胸糞が悪くて、気分を害する作品になっていたと思う。どっちにも振り切れていない、単なるメディア批判にしかなっていないのが勿体ないところ。
2つの目線で描く日本人の恐怖はかなり良かった。
若干詰め込みすぎているような気もするが、日本人留学生を演じたファンがとにかくいい味を出している。自分を救ってくれた素晴らしい国なのに、同時にすごく居心地の悪い国でもある。Xを巡る日本人の考え方と通じる部分があり、1つの事件に向かって2つが合流するスタイルは結構面白く見れた。
にしても、映像が古すぎないかな。
10数年前のものに見える。あえて淡白にしているのか、映画館だと映像のクオリティが低くて...。まあストーリーは面白かったからいいけど、あまりに無機質だった。