「モノトーンというより、「さよならディムライト」?」さよならモノトーン へねみこさんの映画レビュー(感想・評価)
モノトーンというより、「さよならディムライト」?
タイトル通り、映像暗め。人物の表情が見えないことも多々あった。だがそれだけに感情を吐露する場面(美鈴が涙するところなど)や、エンディングでの修太の表情がより際立っていたとも言える。舞台挨拶でも仰っていたが「受け」から始まる難しい演技や視線の動きも、しっかりこなされていた、若い主演お二人素晴らしき。(観ている側も気になったが、強風の中の撮影お疲れ様でした 苦笑)
ヘビーな話の中で、美鈴(彼女自身もヘビーだが)の存在は一服の清涼剤。(ただ「よく分かったな」感は気になったけど)
「家族代行サービス」…うん、魅力的な題材。依頼してくる家族の怪しさや、居酒屋での父との会話など伏線も良かった。
しかしながら、この設定をフルに生かせていたかというと…。修太のトラウマは「母のネグレクト→愛憎」「友人の自死→罪の意識、後悔」の二つなのだが、これらの結びつきが薄い上に、修太が過去のトラウマも家族代行も、周囲の人間に話さないので、彼の苦悩の内容が分断して捉えられてしまうのだ。結局、彼ひとりで解決…してしまっていた感が否めなく。(修太の過去ともに、安本家の正体が徐々に明るみになっていく展開なので、仕方ないのかなぁ…。家族代行について、修太の捉え、変化していく部分はもう少し描いても良かったのでは)
最終盤、美鈴は「瀬野くんの周りには支えてくれる存在がたくさん…」という意の台詞を言っていたのだが…
親の虐待に対して寄り添おうとする美鈴以外、ロクな人いないように思うのは私だけだろうか…。(「家族」がテーマなのに、自死した友人と、割とウザい誠の存在という「友人」という軸が入ってくるのも、若干ブレを感じてしまう)
それだけに、美鈴と修太が「家族」について考え、「家族」のように言葉を交わすシーンには納得させられるのだが。映像的にも、まさしく「さよならモノトーン」。修太と美鈴のこれからに幸あれ。
(最後の母との2シーンが必要かどうかは見方の分かれるのかもしれないが…)