「不可思議な共犯関係。」PIGGY ピギー レントさんの映画レビュー(感想・評価)
不可思議な共犯関係。
スペインの静かな田舎町が一人の殺人鬼によって恐怖のどん底に陥る。精肉店の看板娘サラはポッチャリ体系で出不精、そんな彼女がいじめっ子たちをさらった殺人鬼と葛藤しながらも対峙してゆくという物語。
目の前で自分をいじめた女の子たちが誘拐されるも恐怖でどうすることもできないサラ。私をいじめたあの子たち、いいざまと自分を納得させる。しかし、プールで遺体が発見され、女の子たちの母親は娘たちが行方不明と大騒ぎとなる。通報しなかったサラはバツが悪く噓の証言をしてしまう。
しかし、そんな中、殺人鬼が彼女に近づいてくる。なぜか彼は目撃者の自分を襲わず、タオルを渡してくれたり、菓子パンを与えてくれたりと色々と気遣いをしてくれる。いったい彼は何者なのか。
オープニング、肉切り包丁で捌かれる豚肉のシーンはこれから繰り広げられるゴア描写を期待させたが、ほとんどそんなシーンはなく殺害シーンはほぼ見せない。サラをからかったチンピラ三人組を車でひき殺すかと思いきやそれもなかった。最後までもう一つ盛り上がらない。
作品冒頭でサラをいじり倒す女三人組が本作で一番面白かったかな、殺人現場の野次馬も彼女を見て確かにデブね、って、どんだけデブでいじり倒すのか。製作者側が一番悪乗りしてた気がする。本作はいじめ問題やルッキズムの問題をテーマにしてるなんて間違っても思ってはいけません。
結局殺人鬼を倒し、いじめっ子たちを救ったサラ。彼はいったい何者だったのか。もしかすると彼はサラが生み出した幻想だったのではないか。この閉鎖的な町では皆が顔見知り、見慣れぬものがいればすぐに噂になるはずだが、彼に対する目撃証言は一切なかった。
実は彼はサラが作り出したもう一人の自分ではなかったか。閉鎖的な町で、抑圧的な母親の元、日々家の手伝いで同世代の若者のように青春を謳歌することもできず、周りからはいじめにあっていたサラが自らの境遇を呪い作り出した存在だったのではないか。両親を襲い、いじめっ子たちに復讐し、この場所から自分を解放してくれる存在として。
しかし、結局は良心の呵責に耐え切れず幻想である彼を倒し、彼女は町に戻る。なんて、ちょっと無理があるか。