「赤い春」PIGGY ピギー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
赤い春
劇場で予告を見かける事があまりなかったので、いじめられた子のリベンジスリラーなのかなって感じで鑑賞。去年くらいにこのパンチのあるポスターを見ていたので、深く脳には刻まれていました。
切り口が特殊な作品で、思っていたほどバイオレンスでは無いけれどいじめられた子の心情、そこにやってきた救世主がどんな人物であろうと神のように見える現象、母親との関係、見た目のコンプレックスとそれに対してのアクションなどなど、100分の作品とは思えないくらい内容が詰め込まれていました。
太っている姿から子豚と呼ばれて結構なイジメを受けているサラ、ある日プールで泳いでいたら網で捕えられて殺されそうになれ、衣類もバッグも何もかも奪われて帰路に着いていたらプールにいた男が乗った車にいじめっ子たちが乗っていて…といった感じのあらすじです。
サラはまるっきり痩せる気が無い(つまみ食いの常習犯)なもんですから見た目の件はもうしょうがない気がします。これに対してのお母さんの対応、というかお母さんがかなり難のある人物で、娘のためと言いつつ自分の保身のため、死体が発見された現場に娘を連れて行ったり、娘に悪態ついたりとなんだか嫌な母親像そのまんまの人物でした。
旦那さんも完全に屈服している様子だったので、母親が違えばもしかしたらもっと社交的になっていたのでは…?と考えてしまいました。旦那さんはだらしないけど人は良さそうですし、弟くんはとっても良い子です。母親の圧力で家の勢力図が狂ったのかなぁとも。まぁ太り過ぎはサラの問題ですね。
サラの行動が不安定なのが観ている側に色んな感情を植え付けるんじゃないかなと思いました。自分はこういう子いるよな〜ってなんだか懐かしくなったりもしましたし、想定外な事が起こったらパニックになってしまうのは分かるなーと共感しながら観ていました。時々素っ頓狂な行動をする際は疑問符を持って観ていました。
殺人鬼は多分サラを助けたいというよりかは容姿に惚れたってやつで、それを邪魔する人物や不愉快な人物は拉致するか殺すかという選択を取っているのが印象的でした。ストーカーに近いんですが、陰湿な感じはせず淡々としており、その愛情を爆発させた時にしっかり恐怖が襲ってくるのも良かったと思います。
殺人鬼とのガチタイマンは中々見応えがありました。そこまでは怯えて逃げる事、黙る事、泣く事ばかりだった彼女が自身のため、いじめられていたとはいえ友のために殺人鬼に精一杯抗ってトドメを刺すのは心苦しさも伝わってきてとても良かったです。銃を構えた時の風格がベテランの域に突入していました。
友にも恨みはたくさんあった(なんなら助けるのを躊躇った時に無茶苦茶文句言われてた)けれど、縄や鎖を銃弾で撃って助けるという根の優しさが溢れ出ていました。キービジュアルに映っている血まみれシャツのサラのインパクトは強烈で、バイク青年の後ろにつかまって街へと戻るといったラストで物語を終えました。
とても見応えのある作品でした。イジメと殺人鬼を結びつけた上で物語の進め方もしっかりしてて、サラという行動がとても不思議な子の歪な成長も描き切っており、グロさも控えめながら備えており、見た事ないジャンルの映画を堪能する事ができました。上映規模はかなり小さいですがオススメの一本です。
鑑賞日 9/23
鑑賞時間 20:55〜22:40
座席 E-12