「紙縒」女優は泣かない ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
紙縒
スキャンダルでの謹慎明けの女優と、大きな仕事が来なくて悩む新人ディレクターのドタバタ珍道中だと観る前は思っていましたが、2人含め登場人物が目の前の自分や出来事に向き合うドラマ色の強い作品でした。
ドキュメンタリー撮影と言いつつも、ほとんどヤラセに近い演出を施しており、加えて梨枝はプライドが高い上に演技はそこまでという映像作品との相性の悪さ、そこに自分を曲げられないけれど演出が上手じゃない咲が加わるもんですから、撮影はトラブルだらけで、2人だけのシーンは基本ギスギスしていました。
その道中で家族との再会や友達との再会で徐々に関係性がほぐれるかと思いきや、新たなトラブルが…と言った感じで一筋縄ではないかないストーリーにいい緊張感があって良かったと思います。
後半は完全にシリアスになってしまったので、明るい前半を楽しんだ自分としてはちょっと重いなと思ってしまいましたが、前を向く人の物語としてはしっかりしていたなと思いました。
印象的なシーンでは墓の前での撮影といういかにも不謹慎なシーンをめちゃくちゃコメディに仕上げてたのは凄いなと思いました。強烈なツッコミと冷静なボケと見守るボケというトリオのようなコントが展開されてとても好きでした。どのシーンでもサルタクが加わる事でファンシーになり、劇場型のコントになっているのでお笑い好きとしてとても満足できるものになっていたのは思わぬ収穫でした。
ちょうどいい飯テロも用意されており、ゴロゴロのウィンナーにマヨネーズを垂らした焼き飯なんて美味いに決まってるじゃないかとヨダレを垂らしましたし、親子の絆や仲直りのキーとしてもしっかり機能していてナイスなバイプレイヤーでした。
役者陣は全員素晴らしかったです。
蓮佛さんと伊藤さんのコミカルな掛け合いやシリアスな場面の対比が良かったですし、三倉さんの真面目すぎる姉も良かったですし、年齢的にどうかなと思いましたが吉田さんの従順な弟も良かったですし、なんてったって上川さんのサルタクは最高すぎました。
最初はおちゃらけた奴だなーと思っていましたが、重くなりそうな場面をリセットしてくれますし、どんな場面でも明るい方向へ持っていってくれるキャラクターが素敵でした。ADばりの準備の良さに笑いましたし、挨拶がオッス!であんたは悟空か!とツッコまずにはいられませんでした。劇場での多くの笑いがサルタクだったので、今作だけでも大好きなキャラクターになりました。
個人的な好みですが、出番は少なかったけれど宮崎美子さんが超可愛かったです。こんな可愛いお婆ちゃんいます?ってくらいキュートで癒されました。
ご都合主義なところはありましたし、要所要所に違和感は感じましたが、成長ものの王道を突き進み、オチもしっかりしていましたのでトータルでは良かったなと思いました。真っ直ぐな邦画、近年では減少傾向にありますが、こういう作品がもっと上映されたらいいのになと思いました。
鑑賞日 12/19
鑑賞時間 12:10〜14:10
座席 E-1