「次は誰かの聞こなえない心の叫びを聞く番になる」52ヘルツのクジラたち あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
次は誰かの聞こなえない心の叫びを聞く番になる
昔からよく言葉があります。子供は親を選べない。虐待やネグレクトは今も根強く存在しています。ヤングケアラーの方々のメディアでの特集も多くなり、とても辛い気持ちになることもあります。本人が助けを求めなければ周りは気付けない時があるし、気付いても残念ながら見て見ぬふりをしてしまう人が多いような気がします。
誰かを助けたいと思う時、周りはどういう選択肢をすれば正解なのかが分からないから下手に行動できないし、動いた結果それが悪い方向に転ぶこともある。
それでも助けてくれる誰かが目の前に現れたら、それが救いになるかもしれない。
誰かに手を差し伸べられると、自分が見えていなかった世界が広がって希望が見える。
そして有難みを感じる。
しかし時間が経つにつれて自分が独り立ちできたように錯覚してしまい、大切な誰かを無意識のうちに傷つけてしまう。
本当に自分を見守ってくれている人がもう一度差し伸べてくれた手を払い除けてしまうんですよね。
この作品には様々な人間の生きづらさが詰め込まれています。
セクシャリティについても。
私はこの作品における登場人物の痛みに共感しました。
幼い頃登場人物のいっちゃん(別名:52)と同じような経験があり今でも記憶に残っています。しかし幸い私の場合助けてくれる人がいました。
セクシャルマイノリティについても、自分がそうであることで苦しみ家族の理解を得られなかった人間なので感慨深いものがありました。
理解を得るとか得られないとかじゃなく、好きなように生きるしかないと自分の道を決められるようになったのがいい大人になってしまってからだったことが唯一後悔している事です。
案外わがままなもので理解されなくていいと言うくせに、どこかで理解されることを願っているんですよね。
そして同等に他人を理解することの難しさを考えさせられます。
とにかくあんちゃんには生きていてほしかった。
杉咲花さんのお芝居にはいつも胸を打たれます。素晴らしい女優さんです。