「「酷い」「つらい」「悲しい」魂が揺さぶれすぎて吐き気がした」52ヘルツのクジラたち 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
「酷い」「つらい」「悲しい」魂が揺さぶれすぎて吐き気がした
2024年映画館鑑賞23作品目
4月6日(土)ユナイテッドシネマ フォルテ宮城大河原
入会割引1800円
原作未読
監督は『八日目の蝉』『草原の椅子』『ソロモンの偽証』前編後編『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『いのちの停車場』『ファミリア』『銀河鉄道の父』の成島出
脚本は『小さき勇者たち ガメラ』『ストロベリーナイト』『四月は君の嘘』『ロストケア』の龍居由佳里
ホエールウォッチングの映画ではない
粗筋
三島貴湖は幼少の頃から虐待を受けていた
貴湖は高校卒業後三年間寝たきりになった継父の介護を1人っきりでしていた
介護疲れで大型ダンプカーに轢かれそうになっていたところを塾講師の岡田安吾に助けられた
安吾が働く塾の同僚で高校時代の親友牧岡美晴と再会
貴湖は安吾と美晴の協力で継父を施設に預け就職し新居を見つけ母親から独立した
しばらくして貴湖は社内食堂のトラブルに巻き込まれて怪我で入院する羽目に
それをきっかけに職場の同士で本社から出向していた専務の新名主税と親しくなりやがて男女の仲になる
プロポーズを受け結婚を意識はしていた貴湖だったが主税は親が決めた結婚相手と婚約することになった
主税と別れた方が良いと忠告された貴湖は反発し安吾を突き放す
やっと幸せを掴んだと確信した貴湖だったが主税との愛人関係が主税の両親と婚約者とその家族にバレてしまい縁談は破談し専務は降格されるだけでなく会社をクビになった
腹癒せに暴力を受ける貴湖
じつは安吾はトランスジェンダーで戸籍上は女性だった
男として貴湖を幸せにする自信はなく母にも性転換したことがバレてしまい安吾は自殺した
美晴にさえ連絡もせず祖母がかつて住んでいた九州の海辺の一軒家に引っ越した貴湖
母親から虐待を受けていた長髪の少年を匿うことにした貴湖と彼女を探しにやってきた美晴
貴湖と美晴は少年を連れて少年の親戚の家を訪ねるが優しい叔母はすでに癌で他界していた
少年の名前は「ムシ」でも「52」でもなく「愛(いとし)」だった
愛の母は愛を置き去りにして男と一緒に別の土地に引っ越した
貴湖は施設に預けることはなく親代わりになって愛を育てていくこと決意した
とにかく杉咲花が素晴らしい
こんな凄い俳優になるとは
安吾と美晴と共に大衆居酒屋で飲み食いしてる最中に嗚咽するシーンが特に好き
トランスジェンダーの女性(男性)役の志尊淳も良かった
とても難しい役柄だと思う
母にトランスジェンダーを暴露され奇声をあげるシーンが特に良い
西野七瀬が演じた無責任で自己中で幼い息子をしょっちゅう虐待する母親も宮沢氷魚が演じた専務を解任された途端に豹変し暴力を振るうようになった愛人にも特に「ひどすぎる!」と怒りを感じることはなかった
ああいう大人になってしまう背景は幼少の頃のトラウマであろうことが安易だが想像できる
なにかといえば「生きづらさ」と昨今言われるがそれこそそれが人生だ
みんな違って当たり前だし時には場合によってはぶつかり合うこともあるだろう
それが生きづらさであって当然だ
リアルな人生は削除できないしブロックもできないしテレビゲームみたいにリセットできない
生きづらいのは当たり前だと受け入れてなんとか一日一日乗り切る他ない
星5だがそれでは足りない
なにかといえば魂が揺さぶられたとかほざく映画評論家は世の中にいくらでもいるわけでそれを自分はかねがね大袈裟だと感じていたがこの作品はそれに当たらない
自分のような共感能力がかなり低めな者でも鑑賞はしんどかった
だから無理に観なくても良いけどそうじゃないなら是非観てほしい
配役
東京から九州にある海辺の一軒家に引っ越してきた「きな子」こと三島貴瑚に杉咲花
トランスジェンダーの塾講師の「あんさん」こと貴瑚の職場の岡田安吾に志尊淳
貴瑚の職場の専務で同棲生活を始める新名主税に宮沢氷魚
貴瑚の高校時代からの親友の牧岡美晴に小野花梨
母から「ムシ」と呼ばれ貴瑚からは「52」と呼ぶことを求める長髪の少年の品城愛(いとし)に桑名桃李
美晴の彼氏の鈴木匠に井上想良
貴湖が住んでいる海辺の家を修理した大工の村中真帆に金子大地
愛(いとし)の母の品城琴美に西野七瀬
要介護が必要な貴瑚の継父に奥瀬繁
貴瑚の母の三島由紀に真飛聖
愛の親戚の近所に住む藤江に池谷のぶえ
安吾の母の岡田典子に余貴美子
真帆の祖母に村中サチエに倍賞美津子