劇場公開日 2024年3月1日

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「染まる」52ヘルツのクジラたち AMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0染まる

2024年3月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作読了も、数年前なので細部は記憶が怪しいけど、成島監督が内容を丁寧に描いていて好感。海をたゆたう感覚のテンポを崩さず、過酷なシーンも含めてすんなりと話が入ってくる。社会問題を取り扱いながら、声高に社会派ぶることもなく、ドラマとしてしつかり昇華させていて、感情の揺さ振り方についても後味が良い。

それはさりとて、杉咲花が秀逸。この方、どんな作品にもさらりと溶け込むところが怖い。作品に色を付けるというより、作品に染まる方面の役者さんだと思うが、ここまでいろんな役柄にはまるのだから、多くの監督は自分の作品で撮ってみたいと思うだろう。華奢であどけない顔立ちで、アイドル方面でもいけそうな明るい雰囲気だが、「市子」の恐ろしい難役や綾野剛と共演の「楽園」など、割と過酷な境遇の不幸な役が多い印象なのは、S系の監督達が、愛くるしい顔から恐怖や絶望の表情を引き出したくなるからなのかも。
主人公の人生を助けるミステリアスな岡田安吾役の志尊淳、とにかく友達思いの親友、三春役の小野花梨も、下手すると変に悪目立ちしそうな、キャラクターや立ち位置が難しい役どころかと思うが、うまくハマっていた。それほど出番は無いものの、ベテラン俳優陣も映画を引き締める。倍賞美津子、余貴美子は、それぞれ重要なターニングポイントで途中登場となるが、綺麗に物語の転調を支えていた。こうした演者や演出、物語など、良いチームワークで出来上がった秀作だと思った。

原作読んで無くとも、充分楽しめると思うので、おすすめできる作品です。

AMaclean