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風の電話 : 特集

2020年1月14日更新

“風の電話” それは天国へとつながり、大切な人と話せる――
見るものの人生の、一番大事なところにそっと刻まれる、唯一無二の映画体験
2020年を迎えた今だからこそ見てほしい、珠玉の日本映画の誕生

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岩手県大槌町には、電話線の繋がってない“風の電話”がある。天国に繋がっているというこの電話には、毎日多くの人々が訪れている。そんな“風の電話”をモチーフにした映画が、日本映画界期待の新ミューズ、そして実力派の名優らを共演に迎え、2020年の今、誕生した――。

「M/OTHER」でカンヌ国際映画祭の国際批評家連盟賞に輝き、海外でも評価の高い諏訪敦彦監督が、新作の題材として選んだのが、くだんの電話である。1月24日から全国公開を迎えるこの感動的な映画に、モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行、三浦友和らが集った。


風の電話 それは天国へつながり、大切な人と話せる――
見る者の人生の、一番大事なところにそっと刻まれる、唯一無二の映画体験

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この“風の電話”は多くのメディアに取り上げられ、何度も映像化の企画が浮上したが、いずれも成立することはなかった。しかし傷ついた人たちが癒されていくコンセプト、魅力的なキャスト・スタッフが集結したことにより、ついに“珠玉の感動作”として完成することができた。

ここでは「風の電話とはなんなのか」、そして「物語はどういったものなのか」を紐解いていこう。


●電話線はつながっていない しかし、天国へつながる電話ボックス

2011年、大槌町のガーデンデザイナー・佐々木格氏は、自宅の庭に電話ボックスを設置し、なかにラインを引いていない黒電話を置いた。「死別した従兄弟と話したい」。佐々木氏のそんな思いを込めたそれは、「天国につながる“風の電話”」と呼ばれ人々の間に広まっていった。

同年3月11日以後、“風の電話”は各メディアでも報じられるようになり、ドキュメンタリー番組で取り上げられることもあった。その内容に感銘を受けた本作の企画プロデューサーは、同氏のもとを何度も訪れ、映画化の許諾を得ることができた。そうして――悲しみを抱えて生きる人々に、静かに寄り添う映画が誕生した。

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●少女は風の電話を目指し、広島から岩手へ、旅を始める――

物語の主人公は、故郷・大槌町で東日本大震災に遭い、家族を奪われた女子高生ハル。今は広島の叔母の家に身を寄せ、仄暗い日常の底で、膝を抱えて悲しみにくれている。

映画は、そんな少女が広島から故郷・大槌町に帰り、人々との交流を経て“風の電話”にたどり着くまでの道程を通じて、“傷ついた心の救済”や“人々が忘れかけている大切なもの”を映し出していく。

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主演は注目の若手女優・モトーラ世理奈。さらに西島秀俊、西田敏行、三浦友和といった実力派俳優が顔をそろえ、“唯一無二の映画体験”を観客に届けるべく、熱演を見せている。


【予告編】 今だから、伝えたい 傷ついた日本をたどる、再生の物語

モトーラ世理奈 日本映画界の新たな“ミューズ”の誕生
“静寂の女優”が見せる、珠玉の演技は必見

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モトーラ世理奈とはいったいどのような女優なのだろうか。2019年末の完成披露試写会で、西島、西田、三浦は彼女についての印象をこう述べている。

 「嘘をつかない女性、カメラの前だと何かしないとならないと思うけれども、今感じた事、自分が今信じられることを言葉にする方。天才的で稀有な女優」(西島) 「人生3周くらいしてるんじゃないかと思うくらい、目と目があえば見透かされそうな恐怖と感動の入り混じる不思議な感覚になりました。すごい表現者が出てきたなと。彼女の色んな作品が見てみたい」(西田) 「何も語らないのに伝わる。それがすごい」(三浦)

彼らの言葉は大げさではない。映画を見れば、衝撃を受けるはずだ。この若き女優の存在が、本作に“見たこともない輝き”をもたらしているからだ。


●主演・モトーラ世理奈 注目すべき“天性の女優”

東京出身の21歳。2015年に雑誌「装苑」でモデルデビューを果たし、16年には「RADWIMPS」によるアルバム「人間開花」のジャケット写真に起用され大きな話題をさらった。18年3月にはパリコレデビューも飾り、映画「少女邂逅」で華やかに女優デビュー。今、映画人が最注目する期待の“新ミューズ”だ。

彼女は、いうなれば“静寂の女優”だ。その芝居には、澄み切った海の底から月を見上げるような感覚がみなぎっている。そして本作は、モトーラを長回しでとらえるショットが非常に多いことが印象的だ。長回しで撮ってみたくなる女優。諏訪監督は「彼女だけの時間が流れている」としたうえで、「黙っている時間が長くても、見ていて全然飽きがこない」と、理屈では測れない不思議な魅力に言及している。

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●演じるのは、震災で家族を失った少女ハル

繰り返しになるが、本作は長回しが非常に多い。カメラはじっとモトーラを見つめ、モトーラもカメラを見つめ返し、そしてスクリーンのこちら側にいる観客に語りかけてくるのだ。

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物語はハルが大槌町へと旅する様子を切り取るが、撮影は物語と同じ順序で実施されていった(つまり順撮り)。それだけに、モトーラはハルが経験することを、そのまま自身の体験として内面化することができていた。

ハルが発する言葉は、果たして台本に書かれたセリフなのか、それともモトーラ自身の心からの言葉なのか――。区別はできないし、区別する意味もない。ただただ、映るモトーラの存在感に圧倒されるばかりである。

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監督はカンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞の諏訪敦彦
即興芝居を引き出す独特の“台本なき演出”のもと、豪華俳優陣が集った

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メガホンをとった諏訪監督は、「2/デュオ」「M/OTHER」「不完全なふたり」などで知られ、特にフランスでの評価が突出している名匠だ。その演出術は独特であり、現場で生み出される空気感の虜になる俳優も多い。


●諏訪監督の“独特の演出術”とは

諏訪監督は即興芝居の演出を用いながら、俳優たちに“自分のなかから沸き起こるもの”を表現することを求め、その場の空気をドキュメンタリーのように切り取っていく。今回は、大筋の台本はあるものの、毎朝その日の差し込み台本が追加されることが恒例となっていた。

だからこそ、本作に映っているのは“純粋な演技”ではなく、“俳優たちの心の動き”なのである。物語であり、同時にドキュメンタリーでもあるという二面性が、見る者を得も言われぬ体験に導いていく。

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●西島秀俊、西田敏行、三浦友和…実力派たちが“真実の名演”見せる

ハルは旅路を経て心の傷を癒やしていくわけだが、ハルを導く人々を演じる面々は非常に豪華だ。西島秀俊は「2/デュオ」以来、約22年ぶりの諏訪組。クルド人コミュニティと交流するという、難しいシーンにも果敢に挑み、「俳優としてどうすればいいかわからなくて、ヘコみました」と試行錯誤しながらも、切実な個人の揺れを実直に体現した。

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福島県郡山市出身の西田敏行は、本作では諏訪監督の要望を受け、ほとんどのシーンを即興で演じきった。つまり“真の言葉”が、カメラに収められているのだ。

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また、多くのシーンで登場人物は“何かを食べている”。食べる演技は、実は意外と難しい。セリフを言いつつ食べるペースを考え、表情の芝居などと両立させねばならないからだ。なかでも三浦友和の食事は白眉だった。対峙するモトーラの発言を受け、「もぐ、もぐ」と2回、ゆっくりと咀嚼する場面がある。その咀嚼に、その時の感情がすべて集約されているのだ。

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●クライマックスの10分間 あなたはどんな言葉を聞くのか――

紆余曲折を経て風の電話にたどり着いたハルは、黒電話を手に取り、思いの丈を打ち明ける。そこでどんなセリフを話すのかは、ハルと同じく旅を通じて成長していった、モトーラ世理奈に任されていた。

ハルすなわちモトーラの独白は10分以上も続き、カットがかかった。彼女の“ハルとしての旅”も、ひとつのピリオドを迎えた瞬間だった。スクリーンに映る“その瞬間の集積”“その言葉”の数々を、あなたはどのように受け止めるのだろうか――。

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