サステナブル未来映画祭 : 特集

2022年1月28日更新

見るだけで、地球と社会に良いことをしたくなる!
「第1回サステナブル未来映画祭」開催への思いと作品の見どころ

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1月28日~2月10日までシネマ映画.comで開催される「第1回サステナブル未来映画祭」。“「映画」を通して、世界を知る。そして未来を想い、行動する”をテーマに、環境問題や社会課題をモチーフにした作品を取り上げる新しい映画祭です。ラインナップは、本映画祭で先行独占配信となる「グレタ ひとりぼっちの挑戦」をはじめとした全8作品。このほど、主催の株式会社ガイエの近藤雅一取締役と映画.comの駒井尚文編集長が、映画祭の意義や映画祭で上映する作品について語り合いました。(進行/蛯谷朋実)

▼「サステナブル未来映画祭」開催の経緯

蛯谷 まずは、今回「サステナブル未来映画祭」を開催するということで、主催の近藤さん、開催に至った経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

近藤 「サステナブル未来映画祭」を企画した背景は、私が昨年SDGsに関わるビジネススクールに通い、SDGsについていろいろ学んで来たことが大きいですね。SDGsビジネスマスターの資格を取りました。SDGsをビジネスの視点で捉えると、簡単に言えば「社会課題の解決を図るため、事業を通してイノベーションを起こす」ということです。

なので、長年「映画」に携わっている身として、「映画」を通して、この資格を生かした何か具体的な行動が起こせないかと考えたのがキッカケです。

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宣伝の仕事は「映画の作り手の想いや言葉を、時代・時代に合わせた手法で受け手(観賞者)に届ける仕事」だと思っています。その「映画」は、受け手の心に届きやすく、共感を受けやすいコンテンツだとも。ならば「映画」の力で、地球・世界・社会をより良くしたいという共感を作り、日常生活で一つでも地球に良いことをしてみる、みんながそんな行動を起こすキッカケになる場(映画祭)を作ってみたいと思ったんです。

駒井 近藤さんから、映画祭をやりたいという相談を受けまして、では「シネマ映画.com」で是非やりましょう!と即決しました。ちょうど我々も、シネマ映画.comのプラットフォームを使って何かしらの映画祭をやりたいと思っていたのです。

▼「サステナブルな未来」って? 限りある地球の資源について考えよう

蛯谷 SDGsというのは2015年に国連サミットで採択された、「持続可能な開発目標」というものですね。最近いろいろなところで耳にする方も多いと思います。今回の映画祭では「サステナブルな未来」に向けてが一つのテーマになっていますが、「サステナブルな未来」というのは具体的にどんなものなのでしょうか?

近藤 私が想う「サステナブルな未来」とは、自然環境や生態系を壊すことなく、限りある資源を未来の世代まで残し、豊かで平和な暮らしを、誰ひとり取り残さずに続けられる未来のことです。例えば限りある資源ということで、こんなデータがあります。2017年は地球1.7個分の資源を使っていしまいました。このまま使い続けていったら2030年には地球2個分の資源を使うと言われています。

ちなみに昨年はというと、2021年の途中で、すでに地球1個分の資源を使い切ってしまったそうです。その日は7月29日です(日本は5月6日)。これをアース・オーバー・シュート・デーといいます。残りの4カ月は次の世代の資源を借金して使ってしまったということです。2022年のアース・オーバー・シュート・ディは昨年より早まるのか遅くなるのか、日本も含め世界中の人たちの行動で決まると思っています。

蛯谷 地球2個分! むしろそんなに資源はあるんですか?

近藤 地球1個分しかないところ、2個分使うために、地球温暖化や生態系の崩れなど悪い影響が出ています。SDGsは地球1個分の暮らしをするためにどうしていけばよいかという目標を掲げたものです。

蛯谷 なるほど、すでに人類は地球に大きな借金をしながら生きているということですね。しかし、どういった行動を私たちがすれば防げるのかわからない……という人も多いのではないでしょうか? だからこそこの映画祭の出品作品が私たちの行動にヒントを与えてくれるということですね。

近藤 映画祭のテーマは“「映画」を通して、世界を知る。そして未来を想い、行動する”。この映画祭から興味のあるテーマを持つ作品を見て頂いて、共感できることがあれば自分の仕事や生活の中で何かできることは、と自分事にして考えてみると良いかもしれません。

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▼様々な視点で地球と社会の問題にフォーカスした8作品をラインナップ 

蛯谷 まずは世界で起こっていることを映画を通じて知るというのは、アクションとしても起こしやすいですね。興味のあるテーマから見るということですが、今回どんな作品が上映されるのでしょうか?

駒井 今回、8作品ありまして、それらをざっくり分類してみます。どの映画も、現代の東京で生活している人には、身につまされるテーマが出てきます。

「グレタ ひとりぼっちの挑戦」気候問題
「気候戦士 クライメート・ウォーリアーズ」気候問題
「ダムネーション」環境問題
「0円キッチン」ゴミ問題、食糧問題
「マイクロプラスチック・ストーリー ぼくらが作る2050年」ゴミ問題
「ブータン 山の教室」環境問題
「ザ・ニュー・ブリード」環境問題
「ビッグ・リトル・ファーム」環境問題

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蛯谷 社会問題を描いたドキュメンタリーといってもそれぞれ切り口も取り扱っている問題も様々ですね。

駒井 「グレタ」と「気候戦士」は、若くして気候問題を何とかしたいと立ち上がった活動家が、どんな活動を行っているか知ることができます。日本人もこれに混ざって欲しいですね。

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蛯谷 日本でも昨年の夏は記録的な暑さに見舞われたり、ついこの間も日本各地で異例の大雪が降ったりと、気候というテーマは身近に感じやすいです。

駒井 「0円キッチン」と「マイクロプラスチック・ストーリー」は、ゴミ問題を扱います。日本でも最近レジ袋が有料になったりしていますが、そのもっと先を考えて行動しなくちゃって思います。子どもの頃からゴミ問題を考えるようにしないと。

蛯谷 「0円キッチン」は日本のテレビ番組でも似たような企画があるので、そういったジャンルが好きな方には気軽に見ていただける気がします。「マイクロプラスチック・ストーリー」は現代美術家の日比野克彦さんや全国の小中学生が吹替に参加した日本語吹替版での配信なので、字幕が苦手な人にも挑戦しやすいと思います。

駒井 「ダムネーション」と「ビッグ・リトル・ファーム」は、かつてのインフラが時代遅れになってしまい、生態系に悪影響を及ぼしているという問題に切り込みます。それを打ち捨てたままにするのか再生するのかというテーマですね。

「ブータン 山の教室」は、この映画祭で唯一ドキュメンタリーではない劇映画ですが、ブータンの自然、景色が素晴らしく心がなごむ作品です。この映画は、何もメッセージを語っていませんが、サステナブルな生活を営む人々の話なので、一番この映画祭に相応しい気がします。

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▼駒井編集長が刺激を受けた「ザ・ニュー・ブリード」

駒井 そして、「ザ・ニュー・ブリード」は、個人的に一番ツボりました。ミレニアル世代、Z世代の起業家が、どんなことを考えているのかヴィヴィッドに分かります。ある意味衝撃的でした。彼ら・彼女たちは、お金儲けがしたいんじゃなくて、貧しい人や問題のある人たちを助けるために起業するんです。「アメリカンドリーム」がかくも変質してしまったのかと、驚きを禁じ得ませんでした。

蛯谷 これから企業が持つ社会課題に対しての責任というものがより企業価値としても見直されていく形になりますね。

近藤 映画の中で取り上げられている海洋ゴミをリサイクルしてスケボーにアップサイクルしていますが、日本でも同様にかばんにアップサイクルしている企業があります。

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蛯谷 「ザ・ニュー・ブリード」は映画の収益を世界中の恵まれない環境にある若い映画製作者に対して使われていくということで、映画を見るという行為自体がひとつの社会貢献につながるというのも素晴らしいです。

駒井 「金持ちなんてカッコ悪い」って価値観ですよね。世の中に貢献してナンボ。私も経営者なので、大変刺激を受けました。

蛯谷 大手企業でも社会課題に貢献しているか否かが、人々の購買意欲に影響を及ぼし始めています。

駒井 そこが、昨今のSDGs流行りに繋がっていますよね。

蛯谷 若い世代の経営者のみならず、すべての経営者に求められていますね。

近藤 「ザ・ニュー・ブリード」でハーバード大学のシーンがありますが、そこで語られている「社会価値」と「経済価値」の両立を企業が求められているんです。つまり、企業は社会課題に対して、自身の事業もしくは新たな事業を起こして課題解決を図る活動をしなければいけない時代になってきています。

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蛯谷 お金を稼がなくてもいいではなく、いかに社会課題と向き合いながら、付加価値をつけて経済を回していくか、ということが大事なんですね。

駒井 今の学生たちも、その観点で企業を評価しているということですよね。

近藤 いまエシカル就活がトレンドです。企業の志望動機の上位に給料より社会貢献度のほうが重要らしいです。

蛯谷 働きがいの観点が、年収や自分の好きなことだけではなく、いかに社会に貢献できるかというのも加わっているということですね。

駒井 私たちはバブルの頃に学生やってましたから、今の価値観とは180度逆です。すごい時代になったなって思いますよ。

近藤 そうですね、成長、成長、リッチ、でしたから。大量生産・大量消費のツケが、地球1個分以上の資源を使ってしまっている結果になっているのかなと。

蛯谷 今の若者は数十年後にそもそもこの仕事は残っているのかということも考えながら就職活動をしていかなければならないのでしょう。

▼スウェーデンの環境活動家グレタさんのドキュメンタリーを、いち早くオンラインで全国に届けたい

蛯谷 近藤さんは今回の出品作品の中でもっとも皆さんに見てもらいたいと思う作品はどの作品でしょうか?

近藤 8作品全て見てほしいと思っていますが、強いてあげると私はやはりスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのドキュメンタリー「グレタ ひとりぼっちの挑戦」ですね。この映画祭の開催をこの時期に設定した理由でもあるんです。

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蛯谷 この時期というのは、どういうことでしょうか?

近藤 1/28からの開催ですね。映画祭の企画立案時に、ちょうどこの作品が劇場公開している時期でした。なかなか全国津々浦々で劇場公開するには難しい作品かと思いました。SDGsのビジネススクールで学んでいたときに、日本全国から受講生が参加しているのを見て、社会課題に取り組もうとしている人たちは地方にもたくさんいると思ったんです。

劇場は物理的な制約もあり、なかなか見る機会が作れない。ならば劇場公開終了時にデジタル興行ができないかと思い、権利元の配給会社さんに相談に行き、映画祭の主旨などに共感を頂き、この時期に映画祭の開催をすることにしました。

駒井 オンライン配信の解禁タイミングが、1/28にフィットしたということですよね?

近藤 はい、ベストマッチでした。

駒井 なので、他のプラットフォームに先がけて、「サステナブル未来映画祭」が先行で配信することになりました

蛯谷 映画館で映画を見る体験は素晴らしいですが、住まいの近くに上映館がないという理由で、見たいと思った人が映画を見られない、そして映画を届けられないというのは悔しいものです。この映画祭はオンライン開催ということで、日本のどこに住んでいても、事情があって映画館に行けなくても、良いタイミングで映画を楽しめます。これは、今後の映画にとっての“サステナブル”な取り組みとも言えそうですね。

蛯谷 近藤さん、今回の映画祭のキーともいえる「グレタ ひとりぼっちの挑戦」について、おすすめのポイントを教えてもらえますか?

近藤 グレタさんのことは皆さんご存知だと思いますが、彼女が15歳のときに気候変動に対する政府の無関心に抗議するために国会議事堂の前で一人でストライキを始めて、それが徐々に世界に波及し地球規模での影響に至ったこと。また有名な国連でのスピーチ。オフィシャルで語られる表の顔も見応えありますが、プライベートのときに見せる彼女の素顔にもとても心を動かされますね。映画祭のテーマでもある「行動する」ということはどういうことかを、見る人達の心に問いかけてくれる作品です。

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蛯谷 15歳の少女がたった一人で始めた行動が世界的に波及していく、というのは彼女も作中で語っていますが「まるで映画のよう」ですよね。それが現実で起きていることに感動を覚えました。

駒井 10代で行動している人たちと言えば、香港の雨傘運動の若者たちが有名ですが、グレタさんの場合、もっと大きなものに立ち向かっているんですよね。しかも、彼女は孤独で、両親以外に仲間もあまりいない。相当なチャレンジだと思います。この映画見ると頭が下がりますよ、ほんと。

近藤 グレタさんが始めた「フライデー・フォー・フューチャー」は、世界中に広がり、日本でも行われているようです。

蛯谷 作中でも日本語のプラカードを持った青年が登場します。

駒井 今日、気になってグレタさんのFacebook見たら、毎週金曜日に学校ストライキやってましたね。安心した。

近藤 日本の中高校生たちも、グレタさんの国連のスピーチを見て活動はじめたという人かなりいると思いますよ。SDGsについて言えば、小中高とすでに学習指導要綱に入っていて、子どもたちは当たり前に学んでいるので、素地はできていて、あとは行動をするかしないかみたいなところですね。

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蛯谷 グレタさんの訴えの中で「私たちが大人になったときには取り返しがつかないことになっているからこそ、今の首脳陣が行動をしなければならない」というのは、本当にごもっともで、今の若い世代が学校で学習したことを大人の我々は率先して知り、勉強し、行動しなければならないですよね。映画、特にドキュメンタリーというのは、世界の過去を、今を、未来を知るとても重要な方法だと思います。今回の映画祭で、一人でも多くの人が考え、行動するきっかけになることを願っています。

近藤さん、最後に伝えたいメッセージなどありますか?

近藤 はい、子どもたちは当たり前にSDGsを学んでいます。大人たちよりもよく知っています。子どもたちに負けないためにも大人たちが“サステナブルな未来”を創る担い手として自覚して頂き、身近な購買から地球の良いこと、社会に良いことを実践していただければと思います。一人の一歩より100人の100歩と拡がっていくことが大事かと思います。

この映画祭は、今後もサステナブルな未来につながる社会課題をモチーフにした作品を積極的に上映する映画祭として開催したいと思っています。まさに持続可能な未来への映画祭にしていきたいと願っています。

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