コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第11回
2017年11月6日更新
■新しい時代の三位一体~クラウドファンディングについて
大高 1回目のクラウドファンディングではどういう方が応援してくれましたか?クラウドファンディングをすることで心境の変化はありましたか?
松原 やっぱり頂いたお金をいかに大事に使うかということです。自分のお金なら思い切って結構使えますが、頂いたお金という感覚があるので、有効に使わなければいけないなというプレッシャーは感じました。
大高 応援してくれたのはどのような方が多かったのですか?
松原 1回目は4割近くが知人で、6割は記事を見て共感してくれた人でした。2回目は知人が2割、8割は映画の内容に対して共感してくれた人、もちろん2回目の時は、作品として完成しているので、記事の書き方や内容が伝わりやすかったのかもしれません。全く知らない方から「こんなに?」というくらいの支援もありました。1回目は知人から10万円など、大口の支援があったのですが、2回目は大口の支援はそれほどなく、テーマに共感してくれた方が、本当に広く浅く支援してくれました。ありがたかったですね。
大高 クラウドファンディングをやってみて良かったのは、そういう所ですか?
松原 そうですね。支援して下さった方々と、上映を含めてこの先もつながっていくんだろうなと。私もサボったところ、リターンではなく、発信の部分でまだまだ不足していたので、応援してくれた人にはちょっと申し訳なく思っています。リターンは確実にしっかりと返して、その先も映画を通してつながっていければと思います。
大高 テーマへの関心などで、1回目よりも2回目の方が広がっていると感じていますか?
松原 2回目の方がはやりその感じがありましたね。知らない人からの支援があったので。
大高 それはどうして広がったのでしょうか?なにか秘訣のようなものがありますか?
松原 1回目よりは2回目の方がSNSの発信力に頼ったからかもしれません。1回目の時は、フェイスブックの友達の数からしても300から400位と少なかったです。
榛葉 私がたくさん出しました。私には5,000人くらいフェイスブックの友達がいて、ドキュメンタリー活動につながって頂いています。松原さんを支えなくてはならなかったので、支援のお願いを出しました。松原さんの知人の方も大口の協力をされましたが、映画「うたごころ」シリーズのファンの方も、「榛葉さんが福島で新しい映画に関わるのなら」と全国から支援がありました。
松原 フェイスブックの友達を300~400人から、1か月間で2,000人近くまで増やしました。毎日友達の友達へ「こういうことをやっています」と1日に20人、30人と友達申請をしていました。でも、短期間の間にそんなにたくさん申請すると、上限に届いて、怪しい人物だとフェイスブックの管理者から思われてしまって。それで「ああ今日はもう5人しか申請できない」ということもありました。こういうことを繰り返していると、友達申請を返してくれる人もいます。それに対して返信をせねばなりませんから、その時間たるや、その期間は寝る暇もありませんでした。
榛葉 でも、その人たちがその後も支えてくれましたからね。
松原 本当にいつもフェイスブックを見ていて「何をやっているんだろう」と。夜中も申請して、返信が来たらできるだけ早く返そうと。それは結構大変でしたね。
榛葉 でも便利な時代になりましたよ。私が1本目の映画を作った時は、制作費の回収に7年以上かかりましたから。それはSNSがなかったからです。「うたごころ」の頃もクラウドファンディングはなかったので全製作費を自己負担して、恐ろしい額になりましたが、その時はフェイスブックがあって、これを通すと、全国で上映しようという輪の広がりが驚くほど違いました。全国の30劇場で上映しましたが、配給会社を通していないので、宣伝費はゼロです。宣伝をしてくれたのは、全国の人たちです。或いは映画が出来上がってから「これは応援したい」と言ってくれた劇場の人たちが応援してくれました。これはやっぱり「市民力」です。
MOTION GALLERYも、フェイスブックなどのSNSも、明らかに草の根でつながり合う、共感の輪が広がるツールなんですよね。それと私たちのドキュメンタリー映画という愚直な作り方をした、ヒット作を作るのとは違う「大事なものだから大切に作ろう」という映画とは、親和性があるのではないでしょうか。MOTION GALLERY、ドキュメンタリー映画、フェイスブック(SNS)というのは、三位一体となって、これからの映画文化の一端として、社会性のある映画を支えるひとつの輪になるのだろうと感じています。「被ばく牛と生きる」もその中でもっともっと広がればいいですね。
私らは映画を通してしか、皆さんの期待に応えることができないので、ぜひ劇場でご覧頂いて、その後も市民上映会どんどんやりましょうという声が広がっていけばと願っています。それが倒産間際の松原さんを支えることにもなりますし、彼みたいながんばる人をサポートできる社会でありたいと考えています。
松原 じわじわ上映が広がっていけば良いと思っていますので、ぜひ見て頂ければと思います。
「被ばく牛と生きる」
10月28日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次ロードショー。
公式サイト:http://www.power-i.ne.jp/hibakuushi/
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