コラム:LiLiCoのHappy eiga ダイニング - 第15回
2011年10月25日更新
第15回:三谷幸喜の夢は、ケイト・ブランシェット&ジュード・ロウ共演作のメガホン
対談ゲスト:「ステキな金縛り」三谷幸喜監督
リリコ:三谷さん、今年50歳になられて、この後、舞台も小説もありますものね。小説は映画化される予定があるんですか?
三谷:映画化したいなとは思いながら書いているのですが、歴史小説なのでなかなか難しいですね。ふだんはセリフを書くので、話し言葉じゃないですか。自分で決めているのは、なるべく短いセリフでその人物のキャラクターや感情を表現したいと思っているので、いろいろなものをそぎ落としていくんです。小説っていろんな描写を書かなくちゃいけないから、全然違うんですよね。どこまで描写していいのか分からないんですよ。で、結局何も書けないという状態が2週間くらい続いているんです。
リリコ:やばいじゃないですか、早く書かないと! いつも何かをしながら考えるタイプですか?
三谷:そうですね、僕も同じです。仕事以外のことをあまりしていないというか、もともと趣味で始めたようなことが仕事になっているので、仕事以外のことをしている時間がないんですよ。食べているときも何か考えていますし。犬の散歩をしているときくらいですかね。犬も「もっとオレに集中してくれよ」とアピールしてくるので、そのときくらいですね。
リリコ:犬種は何ですか?
三谷:うちは“チョコラブ”といって、チョコ色のラブラドールレトリーバーなんです。もうおじいちゃんなんですが、「ショーシャンクの空に」のモーガン・フリーマンそっくりになっていますね。
リリコ:ははははは。
リリコ:三谷さんが、今やりたくて仕方がない企画ってありますか?
三谷:僕は女優さんで一番好きなのは、ケイト・ブランシェットなんです。もう、ケイトと一緒に何かやりたいんですよ! 会ったことあります?
リリコ:ないんですよ。なかなか日本に来ないんですよね。
三谷:あの人、芝居もうまいし、「インディ・ジョーンズ」であんな役をうれしそうに演じているのを見て、本当にこの人はステキだなと思いましたね。
リリコ:そうですよね。カメレオン女優ですよね。「シッピング・ニュース」を見たときに、誰だかわかりませんでしたもの。
三谷:本当にそうですよ。わかる、わかる。
リリコ:どんな物語を考えられているんですか?
三谷:そこまで具体的なものはないんですけどね。あと、ジュード・ロウも好きなんです。ちょっとやさぐれているように見えて、きちんとイギリス紳士の匂いが漂うみたいな。ふたりで何か1本やりたいんですよね。
リリコ:ジュード・ロウだったら近いです。結構仲良いです。
三谷:本当ですか! 仲良いんですか!
リリコ:本当に優しくて紳士なんですよ。日本も好きなので、頭の中に入れておきますね!
三谷:ジュードに言えば、ケイトに連絡取ってくれそうだし。
リリコ:皆さんに聞く質問なのですが、三谷さんはみんなに見て欲しい映画ってありますか? 以前、深津さんに聞いたときは、「ステキな金縛り」の撮影時に、西田さんから「飢餓海峡」「異母兄弟」「切腹」の3本をすすめられたとおっしゃっていたんですけれど、いかがですか?
三谷:好きな映画はいっぱいありますよね。ちょっとショックだったのは、アルフレッド・ヒッチコックのことを知らない世代がいるんですよ。非常にもったいないなと感じたんです。ビリー・ワイルダーでいうと、今回の金縛りの役に立ったのはアガサ・クリスティ原作の法廷ミステリー「情婦」。今回、法廷シーンを撮るとき、日本の法廷ってなんとなく味気ないじゃないですか。それで、美術の種田洋平さんに相談して「リアルじゃなくていいから、アメリカ映画に出てくるウッディで格好いい法廷を作りましょう」と話したんです。実際どうなのかはわからないんですが、すり鉢状でコロシアムみたいになっていて、傍聴席が上のほうにある。弁護士と検事がやり合っているのを見ている感じでね。「情婦」って、それ以外のシーンも本当によく出来ていて、あっと驚くどんでん返しもあり、映画としてもエンタテインメントとしてもすごく面白いし、おすすめですね。
リリコ:そして、誰かに言われた言葉、いつも心に残っている言葉ってありますか?
三谷:いつもものを作るときに心がけているのは、「神々は細部に宿る」。もとがどこからきた言葉なのかわからないのですが、とにかく細かいところをきちんと作ることが、最終的に全体がよくなるということを感じるんです。映画ってそうですよね。たとえばアングルとかカット割りとか、キャスティングや音楽。いろんな要素もあるんだけれど、細かいディティールにこだわることで、豊かな映画になるって感じるんですよね。