コラム:LiLiCoのHappy eiga ダイニング - 第15回
2011年10月25日更新
第15回:三谷幸喜の夢は、C・ブランシェット&J・ロウ共演作のメガホン
対談ゲスト:「ステキな金縛り」三谷幸喜監督
TBS「王様のブランチ」の映画コメンテーターとして人気のLiLiCoが、旬の俳優・女優・監督から映画に対する思い、プライベートな素顔に至るまでを多角的に展開する対談連載「LiLiCoのHappy eiga ダイニング」。第15回のゲストは、「ステキな金縛り」のメガホンをとった三谷幸喜監督。7月8日に50歳という節目を迎えた三谷監督のもと、豪華キャストが結集し抱腹絶倒のコメディを完成させた。LiLiCoとも、爆笑続きの先の読めない対談となった。
三谷監督にとって、「ザ・マジックアワー」以来3年ぶりとなるオリジナル長編コメディ。監督5作目となる今作は、ある殺人事件を担当することになった“もう後がない”三流弁護士エミが、被告人のアリバイを唯一証明することのできる落ち武者の幽霊・更科六兵衛を、法廷に引っ張り出すために奮闘することで繰り広げられるドタバタ劇だ。主演・深津絵里をはじめ、落ち武者の幽霊を嬉々とした表情で怪演した西田敏行、さらに中井貴一、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、草なぎ剛、佐藤浩市、戸田恵子、篠原涼子、唐沢寿明ら、日本映画界を代表するそうそうたる面々が“三谷映画史上、一番笑えて、泣ける”今作に彩りを添えている。
三谷幸喜(以下、三谷):僕はリリコさんの大ファンで、いつも拝見しています。
LiLiCo(以下、リリコ):ありがとうございます!
三谷:本当に好きなんですよ。
リリコ:ごめんなさい、どこが好きなのか聞いてもいいですか? 結構、自分に自信のない人間なもので……。
三谷:ビジュアル的に格好いいなと思って。僕のある意味、セクシーシンボルなんですよ。
リリコ:40歳になって人生が変わりました!
三谷:大胆であけっぴろげに見えるけれど、ガラスの神経を持っていらっしゃる感じがするんですよ。そこがいいんですよ。
リリコ:ばれていますねえ。取材を終わると、いつも自己嫌悪に陥るんですよ! 今回の映画、こんなに気持ち良く笑って、最後に泣ける映画って珍しいですよね。笑いってすごく難しいじゃないですか。セリフがすごく面白かったし、佐藤浩市さんをあそこで使うというのはビックリしました。
三谷:佐藤さんに関しては、「ザ・マジックアワー」に主演していただいたときに、完成した後に酔っ払って「お前の次の作品に絶対にオレは出る!」と宣言されたんです。さらに、売れない役者の「村田大樹」という役で出たいと。そういってくれたことがうれしかったので、何とか自然な形で出る設定にしたいなと思ったんですよ。
リリコ:中井さんにしても、三谷さんにしか引き出せない演技ですよね。
三谷:いや、中井さんはああいう資質を持っていらっしゃる方なんですよ。深津さんもそうです。たまたま今まで出す機会がなかっただけ。僕は前々から感じていたけれど、世間の方々が気づいていなかっただけです。隠れたものを引き出したというのではないんです。
リリコ:今作は「THE有頂天ホテル」よりも前から構想を練られていて、11年越しくらいの企画ですよね。キャスティングがどうやって決まったのか教えていただけますか?
三谷:深津さんは「ザ・マジックアワー」で初めてご一緒させていただいて、本当に勘のいい人だし、表現力も豊かだし、頭もいいし、僕が1言ったら10返してくれる。そういう女優さんって戸田恵子さんに続いて2人目なんです、僕のやりたいことを瞬間的に理解してくれるのは。この映画って僕にとって生まれて初めての女性が主人公の作品。誰がやるかといったら、深津さんしか考えられなかったですね。
リリコ:オファーをされたとき、どのようなことをおっしゃっていましたか?
三谷:深津さんとの初対面は、「西遊記」で三蔵法師を演じられたときに、僕がゲスト出演したんです。そのときに控え室でちょっとご挨拶して、お互い一人っ子だとか九州出身だとか丑年だとかって、共通点があって盛り上がったんです。それが縁で「ザ・マジックアワー」をやって、今回もご一緒したんですが、盛り上がったのはその日だけ。その後、ずっと距離を置かれているんですよ。別に親しくなりたくて映画を作っているわけではないので構わないんです。むしろ、近寄って来られるとわずらわしくなったりするタイプなので心地よくもあるんですが、でも限度があるだろうと。もう少し来てほしい感じはするんですよね。だから、どんな人なのかもまったく分からないんですよ。ただ、仕事に関して言うと、僕が無理な注文を出したときでも「はい、わかりました」と言って、すぐにやってくれる。躊躇がないので、すごくやりやすい女優さんですね。
リリコ:また西田さんも最高に面白かったですよね。
三谷:前回、「ザ・マジックアワー」のときは、港町を牛耳るギャングのボスみたいな役だったので、すごくストイックに「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドのように演じてくださいとお願いして、一切アドリブを封印しちゃったんです。それがすごくストレスになったようなので、今回は好きなだけ遊べるような役をやってほしいと思って、落ち武者の幽霊をお願いしたんです。ものすごく弾けてくださって、この人は共演者を笑わせるためだけにこの場所にいるんじゃないかっていうくらいに、いろんなことをされるんです。深津さんは絶対に吹かない人だから、そのせめぎあいが面白かったですね。絶対に笑わない。カットがかかったら「やめてくださいよ」とか言うんですが、本番ではNGにならない。それが分かっているから、西田さんはさらに仕掛けていく。いい感じでしたね。
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