コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第212回
2013年1月17日更新
第212回:第70回ゴールデン・グローブ賞授賞式&アフターパーティーに潜入!
昨年に続き、今年もゴールデン・グローブ賞に参加した。昨年は雰囲気に圧倒されてろくなレポートができなかったので、今年は授賞式の裏側について詳しくご紹介したいと思う。
これまでにさまざまな授賞式に参加させてもらっているけれど、ゴールデン・グローブ賞の華やかで自由な雰囲気は、その会場によるところが大きいと改めて感じた。授賞式が行われるのは、アカデミー賞のコダック・シアターやエミー賞のノキア・シアターのような劇場ではなく、ビバリーヒルトン・ホテルのボールルーム、いわゆる宴会場だ。畏まってステージを見つめるしかない劇場型と異なり、こちらはグループごとに丸テーブルを囲むことになるので、結婚披露宴に近い。実際、コース料理も出てくる。
授賞式の開始は、東海岸の放送時間に合わせて午後5時(東海岸の午後8時)。1時間半前からディナーが振る舞われ、デザートのころになると、有名俳優たちが大挙して会場に駆け込んでくる。彼らは開始直前までレッドカーペットでの取材を受けているので、食事を取らずにそのまま本番となる。放送がスタートすると、給仕の人たちが会場から姿を消してしまい、新たな料理が運ばれることも、皿が片付けられることもない。幸い、各テーブルには数瓶のシャンパンがあるので、これを同テーブルの友達と飲み交わし、楽しく談笑しながら、受賞発表を見ていくことになる。もっとも、カメラ映りや受賞スピーチに気を使わなくてはいけないセレブは、お酒を控えているようだけれど。
授賞式が終わると、本格的な宴がはじまる。各映画会社がそれぞれアフターパーティーを企画しており、セレブとその同伴者たちは解き放たれたように、各パーティーに流れ込んでいく。それぞれホテル内を会場にしているので――ワーナーは中庭、HBOはプールサイド、NBCユニバーサルは駐車場上の特設会場だった――、はしごも簡単。うれしいのは、僕ら記者だけでなく、セレブもゴールデン・グローブの夜を満喫していることだ。
とくに映画俳優の場合は、撮影期間が終われば、同じ共演者と仕事をする可能性はゼロに近い。連絡先を取り交わしていなければ、2度と会えないかもしれないのだ。でも、お互いにいい仕事をしていれば、ゴールデン・グローブ賞の会場で再会できるのである。また、売り出し中の若手にとっては、憧れの先輩に挨拶できる絶好の機会で、かくしてパーティー会場のあちこちで談笑しているセレブたちを見つけた。あいにく音楽がうるさくて何を話しているのかまったく聞こえなかったけれど、彼らを眺めているだけでうれしくなった。ここでの出会いがきっかけで面白い映画が生まれたら素敵だなあ。パーティー会場の片隅でそんなことを考えているうちに、夜が更けていった。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi