コラム:熱狂!インド映画天国 この沼はスパイシー - 第6回
2023年6月28日更新
「RRR」を35回以上観たらどうなる? 熱狂的ファンが至った境地「エンディングで“全て忘れる”」
この“沼”にハマってしまったら、抜け出すことは難しい……。本コラムでは、熱狂的信者を生み出し続ける“インド映画の魅力”を存分に伝えていきます!
第6回は、またまた「RRR」を取り上げます。
今回登場していただくのは、「RRR」の“ガチファン”。どの程度“ガチ”なのかというと……鑑賞回数はなんと36回(取材日の6月21日時点)。果たして、どんな方なんでしょうか? まずはプロフィールをご紹介しましょう。
・お名前:小尾さん(映画配給会社・シンカ社所属)
・好きな映画:オールジャンル。マーベル&DC作品の新作は必ず鑑賞。幅広く観るタイプ
・リピート鑑賞歴:「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(3回)/「トップガン マーヴェリック」(5回)/「バーフバリ」(約5回)
・「RRR」鑑賞回数:36回(6月21日時点)
「リピート鑑賞歴」を見てみると、元々リピーターとしての素地はありそうですが……やはり“「RRR」36回鑑賞”というのは凄まじい記録。なぜそこまでハマってしまったのでしょうか? ご本人にお話を聞いてみました!
●「RRR」チーム来日時点で初鑑賞「これはとんでもないものを観てしまった!」
――取材を受けて頂きありがとうございます。まず初めにお聞きしたいのが「RRR」鑑賞のきっかけです。
小尾さん:最初は、新宿ピカデリーさんで観ました。S・S・ラージャマウリ監督、N・T・ラーマ・ラオ・Jr.さん、ラーム・チャランさんが登壇される舞台挨拶があったので、これは行かねばならないなと。もともと「バーフバリ」きっかけでインド映画が好きになったので“「バーフバリ」の監督最新作”ということで、もともと見たいと思っていましたし。インド映画が日本公開されるのと同時に観に行くのは、実は「RRR」が初めてでした。
――なるほど! では、最初に観た時の感想を教えていただけますか?
小尾さん:最初に観た時は……正直に言ってしまうと、記憶がほぼないんです。
――え…? 記憶がない…? それはどういうことでしょう?
小尾さん:圧倒的な映像にさらされ続けて、何が起こっているのかわからないまま、上映が終わっていました。「これはとんでもないものを観てしまった!」という思いはあるんですが、その詳細が思い出せないという……。一緒に来て下さった会社の先輩とそのあと感想を話したのですが、とにかくすごかったという感想しか言えませんでした。
それで次の日の舞台挨拶にも参加することにしていたので、何が起こったのか確かめなければと意気込んでいきました。2回目は川崎チネチッタさんで観たのですが、大枠の内容を知っているからこそ、より感動が大きくて、ずっと泣き続けていました。2人の登場シーンでテンションが上がり、そこからの「Dosti」でニコニコし、ジェニーとビームの可愛さにほっこりしていたのですが、お屋敷襲撃シーンの火と水の表現とラーマとビームの闘いでとんでもなく素晴らしい作品を観てしまっていると感じてから涙が溢れ始めました。
そこからの記憶がほぼなくて、エンディングのエッタラジェンダで笑顔になりながら帰ったのは覚えています。その日から通勤中も、家にいる時も「RRR」の曲を聞いていて、特に「Komaram Bheemdo」は聞くだけで泣いていました。最初の頃はホントに週3~4回のペースで観ていました。
ジェットコースターみたいなんです。毎回手に汗握るというか……何回乗っても楽しいんですよ。その“楽しい”という気持ちを求めて、映画館に通い詰めている節はあります。
●“想像していないことが連続で起きる”
――「最初に鑑賞した時に面白かった点は?」という質問を想定していたんですが、まさか「記憶がない」と返されるとは思いもしませんでした。
小尾さん:「RRR」の魅力は“想像していなかったことが、連続で起きる”という部分だと思っています。例えば、物語の序盤、ラーマが柵を飛び越えて、まさか群衆に突っ込むなんて思いもしないですし、、子供の助け方もそうやって助けるんだ!?って驚きの連続でした。最後の肩車はもうほんとうにかっこよすぎて……! 予想をはるかに超える展開に泣いたり笑ったりしながら楽しんでいます。個人的には「ビームVS虎」が印象に残りまくっていて、毎回テンションMAXになっています。
●やっぱり“エンディングですべて忘れる”
――“虎チェイス”最高ですよね。ちなみに、リピート鑑賞するなかで注目するようになったポイントはありますか?
小尾さん:ラージャマウリ監督が「キャラクターの情報を細部まで決めている」という情報をみかけたので、表情&仕草を見て「こういう気持ちなのではないか?」と自分なりに解釈するようになりました。
最近気になっているのはビームとジェニーの関係性についてです。何度も観ているうちにビームとジェニーは一目惚れというか、好き合っている感じには見えなくて……。ここのところについては、ファンの皆様の見解を伺いたいです! あと、本当に細かいところを観るようになりました。ラーマの部屋にあるランプが可愛かったり、ビームのお髭にお弁当ついてるシーンがあったり……。ビームもラーマも本当にちょっとしたシーンでもお互いの個性が出ているんです! そういうのを発見するとますますキャラクターと映画への愛が深まります。また、最初に出ているように、ビームが水、ラーマが炎なので水と炎の表現にも注目して頂きたいです。お屋敷での2人の戦いシーンは特に水と炎でお互いの感情が表現されているので本当に感動しました。
とにかく「RRR」に関しては、“情報”が欲しいという感じになるんです。公式から出ているものだけではなく、Twitterに投稿されているファンの方々の考察を読み込んだり。いつか「RRR」完全読本のような分厚い本をだして下さるとうれしいです(笑)。あ、そうだ、リピートする人の“あるある”をお伝えしてもいいですか?
――是非是非!
小尾さん:エンディングですべて忘れます。
――やはり記憶を失う……。
小尾さん:そういう現象があるんです。物語から受け取った感動を覚えておこうとするんですが、エンディングがあまりにも楽しすぎて、やっぱり全部忘れてしまうんです。ですから、いまだに全容を理解できていないと思います。これは自分でもびっくりしたのですが、十何回目で初めてビームが違う色の服を着ていたことに気づきました。
●「RRR」リピート鑑賞→どんな効果があった?
――ちなみに何度も鑑賞するなかで「こんな効果があった」というものはありますか?
小尾さん:テルグ語がちょっとわかるようになったとかですかね…。いわゆる“一人称”は頻出するので、字幕と音声を当てはめて、こういう意味なんだなと。何度も聞いていると、だんだんとわかるようになってくると思います。あとは、めちゃくちゃ愉快な気持ちで1週間を終えることができています。「RRR」を観に行くために1週間を乗り切り、やっと鑑賞し手に汗握って泣いたり笑ったりして、エンディングでリセットされて楽しい気持ちで劇場を後にして。そこから新鮮な気持ちで、1週間を過ごすことができています。
あと最大の効果といいますか、このインタビューに呼んでいただけたことです! まさかこんな機会を頂けるとは思っておらず、素敵な企画に参加させていただけてうれしいです。
――いわゆる“布教活動”は行っていますか?
小尾さん:Twitterでは感想をめちゃくちゃ呟いています!それと、会う友達全員に「RRR」の話をしています。私があまりにも何回も話をするので、普段はあまり一緒に映画を観に行ったりしない友人が行ってみたいと言ってくれることもありました。その時は、すでに1回私と行っている友人と、もう一人の友人が旦那さんを連れて来てくれて、皆で一緒に観ました。
別の友達は、最初に一緒に観たとき、観終わった後感動でずっと泣いていて…。そこまでの衝撃を与えてくれる「RRR」はやはりすごい映画だなと改めて感動しました。そのあと一緒に応援上映にも参加してくれたり、いろんな方を連れて一緒に観に行ったりしてすでに5回くらいは観ているようです!
この前はついに両親を連れて「RRR」を鑑賞してきました。母はすごく気に入ってくれていたみたいで、歌が頭から離れないと何度も言っております(笑)。
――着実に“輪”が広がっていますね。「RRR」を通じた新しい経験というものはありましたか?
小尾さん:インド料理を食べに行く頻度が上がったとか、初めて応援うちわを作ってみたり、インド映画をより沢山観るようになったりなど色々ありますが、一番新しい経験は「RRR」きっかけで、初めて遠征を経験しました。それが上田映劇さんでの発声可能応援上映です!
――残念ながらまだ参加したことがないのですが、相当楽しそうですよね。
小尾さん:めちゃくちゃ楽しいですよ! 一緒に観ている皆さんがそのシーンでどういう気持ちなのかがわかるのも楽しいですし、自分自身が映画を観ながら感情に合わせて音を出せるというのは、映画に参加しているようでまた違った楽しみ方ができます。
とくに鳴り物に関しては一体感がありますし、プロレベルの方がいらっしゃると思います。例えば「ロバートがバイクのエンジンをかけるために、キックをする」というシーンひとつをとっても、皆さん同じタイミングで鳴り物を鳴らすんです。一斉にシャン!と。それも完璧なタイミングで! それがまた楽しかったり。
とても印象に残っているのが、エンディングで観てる皆さんとスタンディングでムルムル(エンディングのダンスの振り付け)が出来たときは本当に楽しかったです。
――まだ「RRR」を観たことがないという方に伝えたい“おすすめポイント”はありますか?
小尾さん:まずダンスシーンもBGMも音楽が素晴らしいんです!アカデミー賞を取った「Naatu Naatu」のダンスシーンは言わずもがなですが、個人的にはビームがムチ打ちシーンで歌う「Komuramu Bheemdo」もおすすめしたいです。悲しいシーンではあるのですが、ビームを演じるNTR Jr.さんの表情の演技が本当に素晴らしくて、歌と相まって思わず何度も観てしまいます。
あとは映像美といいますか、迫力のあるシーンもありますし、一時停止して飾りたいと思うような、絵になるようなシーンが沢山出てくるところもおすすめです! 「RRR」の背景はインドが植民地だった時代です。ラーマもビームもインドの独立運動の英雄だった方がモチーフになっていますので、悲しいシーンや辛いシーンもあります。とは言っても、本当に楽しい映画には間違いありません! アトラクションに乗りに行くような感覚で観に行っていただいて、疑問に思ったことを調べて頂いてもう一度観に行って頂いて。そうやって何度も鑑賞して楽しんで頂きたいです。
●大切なのは記録ではない 上映している限り“観る”ことが重要だ
――ありがとうございます。吹替版が7月28日から全国で劇場公開、そして弊社のサービス「シネマ映画.com」を含む各動画配信サービス(「購入:6月21日配信開始 字幕版/吹替版」「レンタル:7月5日配信開始 字幕版/吹替版」)での提供が始まります。
小尾さん:すみません、我慢できずに吹替版に関しては、昨日配信(購入)で冒頭のみですが少し見てしまいまして……。
――既に購入されていましたか!流石です…!
小尾さん:吹替版もとても楽しそうです!! また新たな「RRR」が観られるのかと思うと楽しみで仕方ありませんでした。字幕とは違って、声の抑揚でキャラクターの感情がよりダイレクトに伝わってくるはず。日本語ならではの“身近さ”と言えばいいんでしょうか。昨日見ていた時は、ずっと叫んでいました(笑)。
あとは字幕があるとどうしても字幕に引っ張られてそこを見てしまうのですが、吹替で観ることで、画面の映像に集中しながら見ることが出来ますし、字幕がない分今まで字幕に隠れていた部分も見ることが出来るのがとても楽しみです!
もう一つ、配信がはじまるということで楽しみなことがありまして……“一人応援上映”をしたいと思っていました。BGMを口ずさんだり、叫んだりと、思うがままに声を出して楽しみたいです。「ビームVS虎」のシーンではぜひ一緒に叫びたいですね!
――では、最後の質問に……無粋かもしれませんが、現段階での「鑑賞の目標回数」をお知らせください。
小尾さん:目標……というよりは、劇場でやっている限りは見に行こうと思っているんです。私以上に劇場に通われている方も沢山いますし、応援上映も各地で開催されているので他のファンの方々も同じ気持ちだと思うのですが、劇場で観れる限り観ておきたいです。
配信は細かな部分まで見ることができますし、好きなシーンを何回も見ることができます。もしかしたら「配信で細部のこだわりまで見る→劇場の大画面で「RRR」を観たくなる→劇場で“体感する”→細かいところを観たくなって配信を観る」という流れが、一番おすすめかもしれません(笑)。
本当にすべてのシーンが感動的であり、面白くも悲しくもなる映画ですが、観終わったあとは必ず楽しくなるので、まだ観てない方はぜひ観て欲しいです。
なお「RRR」は、7月5日から「シネマ映画.com」で配信されます(字幕版/吹替版)。その前売りチケットは、7月4日まで発売中。チケット購入者はシネマ映画.com限定「RRR」特別壁紙がもらえます。
シネマ映画.com限定「RRR」特別壁紙は、N・T・ラーマ・ラオ・Jr.が演じるビーム、ラーム・チャランが演じるラーマ、アーリアー・バットが演じるシータに加え、ラージャマウリ監督も入ったさわやかなイメージの壁紙。7月5日中に購入者宛にメールにて送付します(※作品を視聴するには「映画.com ID(無料)」の登録が必要)