コラム:韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第6回
2011年6月24日更新
韓国の大人気ドラマにもの申す作品「パラダイス牧場」
ドラマをリアルタイムで視聴する人にとって1番の楽しみは、「早く次の回が見たい」という欲求を満たしてくれる「次回予告」ではないでしょうか。しかし、人気のある韓国ドラマをリアルタイムで見ていると、最終回が近づくにつれて、ほとんどの作品で重要な「次回予告」が放送されなくなります。
なぜでしょうか。その理由は、韓国の人気ドラマの多くが、撮影した当日の夜に放送する「生放送ドラマ」だからです。「生放送ドラマ」は作品の後半部に差しかかるにつれ、「次回予告」はもちろんのこと、完成度も若干落ちるという問題を抱えています。しかしこの驚くべき手法が、韓国のヒットドラマを生み出しているのだから皮肉なものです。1回ごとに視聴者の反応が良かった部分を翌週以降に反映し、反応が薄かったキャラクターは改善することで、視聴者の満足度を高めています。まさにネット大国・韓国の特徴を生かした方法と言えるでしょう。そのため、事前にすべてを撮り終えた「完成ドラマ」は、「生放送ドラマ」に比べて反応が薄くなってしまうのです。
「東方神起」のチャンミンが初主演を務めたドラマ「パラダイス牧場」は「完成ドラマ」であり、国民的番組「9時ニュース」の裏番組として放送を開始しました。イ・ヨニと、ドラマ初出演となるチャンミンが主役を演じるということも加わり、あまり期待されずに始まりました。
しかしいざ放送が始まると、予想以上に良い演技を見せるチャンミンに、ふだんは血も涙もないネットユーザーの賞賛が集まりました。そして、予想外にドラマを批判する人が少なかったのです。それもそのはず。このドラマは童話のようにふんわりとしていて、これといった悪役が登場せず、批判しづらいドラマだったのです。
注目すべき重要な点はここです。前回「製パン王キムタック」で言及したように、韓国ドラマは視聴者を刺激する「マクチャン要素」がふんだんに使われてこそ、高視聴率を記録します。筆者が推測するに、そもそもこのドラマは企画の段階から視聴率にこだわっていなかったのではないでしょうか。「マクチャンドラマ」ばかりが成功するこの時代に、淡い青春メロドラマというジャンルや完成度の高いドラマを、もう1度よみがえらせようとする試みだったのではないかと思います。視聴率にとらわれて、作品の完成度にほとんど比重を置かないドラマの制作方式は、すばらしいとは言えません。現在の制作方法改善のひとつとして、「パラダイス牧場」が試験的に作られたのではないでしょうか。
私がこう考える1番の理由は、ほかでもない「キムタック」を作り出したサムファネットワークスが、「パラダイス牧場」を手掛けているからです。ドラマの成功は、運がすべてではありません。ち密な計算に、苦労と準備。なによりもドラマの作り手の価値観が大きく反映されてこそ、結果がついてくるものです。「マクチャンドラマ」でとてつもない成功を収めた制作会社が、視聴率にこだわらずに「パラダイス牧場」を制作したことが、示唆しているのではないでしょうか。