コラム:韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第3回
2011年3月30日更新
魅惑の韓国映画「義兄弟」は南北問題もこえる
「手錠」「ツンデレ」「お尻」「同せい」……実はこれ、2010年上半期最高の観客動員数を記録した、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン主演の「義兄弟」を、(私の独断で)キーワード化したもの。全世界で大ヒットを記録した「アバター」の観客動員数を上回った唯一の国内映画で、昨年の観客動員2位(ちなみに1位は「アジョシ」)を記録。韓国映画のプライドを支えた名作との評価ですが、そんなことは知りません。
北朝鮮のスパイ出身ソン・ジウォン(ドンウォン)と、韓国の元保安部イ・ハンギュ(ガンホ)が運命的に出会い、相手が敵であることを知りながら、互いの素性を隠して奇妙な同せい……いや、同居を始める話。シナリオ2行聞いただけで、ドキドキ、ワクワクしてきませんか? そのワクワクをまったく裏切ることのないストーリーが、女性たちの心をつかんで見事ヒットした理由なのでしょう。
お世辞(せじ)にも美男子とは言いがたい、平凡な中年ガンホをかわいいと思ったのは、この映画が初めてでした。ガンホ兄さん特有の魅力とかわいさもさることながら、相方であるドンウォン効果も大きいのでしょう。前回のコラムに登場したウォンビンの親友で、8.25頭身のモデルと俳優の顔を持つドンウォンの威力。本当にすさまじいものでした。役どころ上、ボロボロでシワクチャの服を着ているのに……イケメンでイケメンでまたイケメン。そんな男ふたりの奇妙な同せい。まるで夢のようではありませんか?
「あら……でもそんなにいかがわしい映画、家族で見られるかしら」なんて心配もいりません。いかがわしさのかけらもなく、笑いあり、涙あり、ハッピーエンドありの、最も気軽に見られるタイプの映画なのです。北と南というシビアなお題も抱えているので、適度な緊張感もあり、いろんな意味で最後まで目が離せないことでしょう。実際、シビアになりがちな北と南の話を、ここまで柔らかく表現した映画も珍しいです。金しか知らない無慈悲な南の男が人間的な優しさを見つけ、忠誠心のかたまりである北の男がアメリカ資本主義の象徴であるハンバーガーを口にする。南北関係の問題より、人間そのものに焦点を当てたことで、温かみが増し、南北問題による議論をさけたのでしょう。
余談ですが、以前に私の好きな某グループの現状を「まるで朝鮮半島みたい」と比喩(ひゆ)する文を見たことがあります。苦々しく感じつつも、「ともにいるべき兄弟同士が、大きな勢力によりふたつに分かれてしまった」という面だけは妙に納得してしまいました。「義兄弟」という映画がくれた、「南北という所属や事情を離れて、視点を人に合わせるだけでこんなに見方が温かくなる」というメッセージは実に興味深く、深い意味があると思いました。
監督の分断の苦しみにおけるメッセージと映画界の復興のためにも、「義兄弟2」の製作を早く行ってほしいものです。その折にはわたくし、映画のコンセプトにぴったりな「ユ」で始まるふたりの役者を推薦します。