コラム:若林ゆり 舞台.com - 第61回
2017年11月7日更新
第61回:ミュージカル俳優・小池徹平が刺激だらけの「ロッキー・ホラー・ショー」でさらに進化中!
それにしても、前回公演で見た古田のフランク・フルターはただただ圧倒的だった。その古田を稽古場で間近に見て、刺激を受けるなといっても無理な話だろう。
「誰よりも、古田さんがいちばん真面目なんです、現場での居方が。だからものすごく刺激を受けます。台本に書いてあることに対して本当に真面目に取り組みながら、足りないところは“間”とかちょっとした動きで空気を埋めていくんですけど、感覚が鋭くて『すごい』のひと言。『ああ、“面白い”の原点って、こうやって真面目にやることなんだな』と思いますね」
稽古が終わってからも、刺激を受ける時間は終わらないという。
「古田さんと稽古の後で飲みに行ったとき、『こうしようと思っているんですけど』と考えていることを言ったら『これもアリかもな』とアイディアをくださることがよくあって。それをまた考えて練って、飲みの場でもう一度ぶつけてみたり。幸せなことに、ほぼ毎日ご一緒してます。駆け出しのころの昔話とかもよくしてくださいますし、面白くて。パーティの続きというよりは第二稽古場かな(笑)」
小池が演じるブラッドは、フランクの古城に迷い込み、刺激を受けて変わっていくという役柄だが、小池自身も変化をしている?
「僕自身はやることがすごく多くて、いまはそれを追いかけるのにもう必死で、自分では変わっているかどうかわからないです。単純なミュージカルに見えますけど出演者の人数も限られているので、影コーラスにしてもみんな出ていながらやるから“影”になっていない(笑)。出ながら、芝居しながら、踊りながら影コーラスなので、いろんなところに神経を行き届かせていないとできない。遊んでいるように見えて余裕がないんですよ! 1曲目から、古田さんでさえ影コーラスしてますからね(笑)」
客席にいれば彼の変化は絶対に感じられるだろうし、このミュージカルはとにかく楽しんだ者勝ち。パーティに潜り込んだような陶酔感を味わいつつ、ファンとして“参加”することに意義がある。今回は、こうした楽しみ方を最大限に引き出す演出となりそうだ。
「『一歩引いちゃったら置いて行かれるよ!』というミュージカルですから。『遊びに行くぞ!』という気持ちで、ちょっと予習をしてから来てくださればより楽しめると思います。観客のみなさんに『これからこれをこう使いますよ』と指南したりして、わかりやすく参加してもらえる演出になっていますので。周りのファンの人がやっているのを見て『ああ、ここでこうやるんだ』とわかることもあるでしょうし、たぶん初心者の方でも自然とうまくできると思うんですよ。古田さんは、自分たちが楽しむんじゃなくて、お客さんが楽しんでくれて『ああ、見に来てよかったな』と思ってくださるミュージカルにしたいってよくおっしゃっているんです。実際にお客さんが入ったらどうなるか、不安もありますけど楽しみです」
2013年に「メリリー・ウィー・ロール・アロング」に主演して以来、「デスノート The Musical」の“L”役や帝国劇場の「1789 バスティーユの恋人たち」、「キンキー・ブーツ」日本版など、ミュージカル俳優として順調に成長を重ねてきた小池。そんな彼にとって、ミュージカルの魅力とは?
「魅力的な曲が多いですから、それを生オーケストラで歌える素晴らしさは格別ですね。曲の効果で深く感動できたり、楽しいミュージカルもあったりして、エンターテイメントの要素がいっぱい詰まっているなと思います。僕は芝居もきっちりやりたいので、体調的な部分も含めてストイックになれるジャンル。ミュージカルではとくに、『こういうことができるようになったらいいな』という課題や目標を見つけられる作品ばかりにめぐり会えてきたので、本当にラッキーだなと思います。作品はもちろん共演者にも恵まれましたし。今回は役としてボケつつ、芝居をしつつ、踊りつつ、スタミナを温存しつつ、コーラスしつつ、というすべてをこなすことが目標。これまではほかの方にコーラスをしていただいて、自分の番です、真ん中で歌います、という形でしたが、そういうのとは全然違う体験なんです。僕にとって、ものすごく刺激を受けられるのがミュージカル。これからもぜひやっていきたいと思っています」
「ロッキー・ホラー・ショー」は11月7~12日 Zeppブルーシアター六本木、11月16日~12月3日 池袋サンシャイン劇場で上演される。以後、北九州、仙台、松本、大阪公演あり。詳しい情報は公式サイトへ。
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka