コラム:若林ゆり 舞台.com - 第14回
2014年8月20日更新
第14回:川平慈英が真夏の夜、三谷幸喜の「ショーガール」でソング・アンド・ダンス・マンとしての魅力を全開に!
ショーは前半に大人の恋を描く芝居、後半にショータイムという構成になっている。三谷は「今回はシャレのめす」と発言していたけれど、どうやら川平自身はダンディとかカッコいい系ではないらしい。
「そうなんですっ! そう思ってやったらもう! 全然ダメだって鼻につくって。『えーっ、オレ、カッコつけてるつもりなのにぃー』(笑)。でもカッコよくとか考えてやると、カッコ悪いんでしょうね。なんだか僕がイッパイイッパイなところが、三谷さんは好きみたい(笑)。自分が思っていたのと真逆を要求される感じなんです。『えっ? こんなことやって大丈夫なの?』って思うんだけど、きっとそういう人間の方が魅力的なんだな。探偵というと、ディック・トレイシーみたいなトレンチコートで、赤いドレスを着た謎の女がいて手玉に取られるとか、そういうイメージが湧くでしょ? でもそんな、浅いところで想像できるようなものは作らない。三谷さんですから。逆を行くと『あー、探偵も人生と格闘してるんだな』という、“生きてる感”が出るんですよ。その存在を信じられる“ナマモノ感”がね。ダメ人間ですけど言葉に力があるので“粋”なんです」
オリジナル「ショーガール」の木の実&細川さんは、新鮮さを保つために距離を置いていたというが、川平とグラブは共演も多く、まるで兄妹のような似た者同士。息はピッタリだ。
「そうですねぇ、兄妹的な感じはありますね。ニイニイが妹にいつも怒られているという絵面なんですが(笑)。『何やってんのアンタ!?』なんてね(笑)。どうだろう、ほかの相手だったらこんな濃密な化学反応はないのかもしれない。ノセるのがうまいんですよ、シルビアは。僕が何かやっても倍返しされて翻弄される(笑)。クーッ、やられたよ、って。何か通じるものがあるんですね、アンテナの周波数が同じみたいな。それを三谷さんも面白がってくれてますね」
今回の「ショーガール」は、同じく三谷のコメディ「君となら」が幕を閉じた後、日本家屋のセットをそのまま活かして上演されるというところもユニーク。午後10時から1時間というスタイルだから、仕事の帰り、映画鑑賞や食事をした後にでも大人が気軽に楽しめるショーなのだ。
「『君となら』で竹内結子さんや草刈正雄さんらが扮するこの家の住人たちが寝静まった後、庭に僕らが現れてショーを繰り広げるという形なんです。『君となら』に出てくる部分が伏線になってたりね。両方を見た人は、より楽しめるでしょうね。クーッ、三谷さん、抜け目ないなあ!(笑)」
たった1時間という上映時間は、作り手たちにずいぶん「削る苦しみ」を強いたようだ。「福田DNA」に自負をもつ川平は、ショータイムの振付や構成も担当。まだまだやりたいことがいっぱいだと目を輝かせる。
「三谷さんは前半部分でさすがの脚本を書きあげてくれましたが、ショーの部分に関しては僕も三谷さんと一緒に作らせてもらってます。ブロードウェイからの借り物じゃなくて、みんなで作ってる、オリジナルの手作り感はありますね。ただやっぱり時間が足りないから、相当カットしましたよ。いろんなものを盛り込みすぎて。だから次につなげたい。あ、これ、映画にならないかな。日本のオリジナル・ミュージカル。木の実さんや草刈さんにも出ていただいてね。やりたいなぁ。まずは今回のショーを成功させないと。ラストはたぶん、『トゥ・ビー・コンテニュー』的な感じになるんじゃないかと思います。サプライズもありますから、乞うご期待です!」
パルコ・ミュージック・ステージ「ショーガール MITANI KOKI'S SHOW GIRL」は8月21日~9月14日、PARCO劇場で上演される。詳しい情報は公式HPで。
http://www.parco-play.com/web/program/showgirl2014/
コラム
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka