コラム:若林ゆり 舞台.com - 第12回
2014年8月6日更新
第12回:巨大な馬のパペットが息づき、想像力に訴える! 名舞台「ウォー・ホース 〜戦火の馬〜」で文楽に学び、パペットに魂を吹き込む俳優たちを直撃。
それにしても、馬を知り尽くしたリアルな演技は素晴らしいのひと言。演じる側としては、パペットを通しての演技はどういうものなのか?
「私はこの仕事ができて、とても幸運だと思っているわ。動物を演じるという経験は、俳優としてのキャリアの上でも格段に成長するきっかけを与えてくれたと思う。動物っていうのは、反応がすごく素直でシンプルなの。だから環境にすごく敏感になって、聞くこと、見ることで周りに素直にリアクトするということを学べた。それに決断するときも、いつもは自分1人でしなくてはいけないけれど、この仕事ではほかの2人も一緒にしてくれるでしょう。そこでプレッシャーが軽くなるという恩恵も感じているわ(笑)」(デイナ)
「スピルバーグ監督の映画と比べてみることもおすすめだよ」と言うのはジョンだ。
「これはもともと児童小説だった作品だけど、それがどう解釈されて舞台作品になり、映画になるのかということがよくわかって興味深かったよ。映画だからできること、舞台だからできることがそれぞれあって、どちらもそれぞれのできる表現を最大限にやってみせた作品だと思う。だから両方を見比べると面白いんだ」
これほど世界中で評価された舞台を、日本にいながらにして見られるというのは素晴らしいことだ。
「ひとつ言えるのは、このカンパニーがこれまでのすべてのプロダクションの集大成になっているということだよ。ここにはキャリアの豊富なメンバーが集まっている。だから今回の舞台稽古で演出家から注意されたのは、やりすぎるなよ、ということだったんだ。経験を積んで技術を身につけているから、いろんなことをやりたくなってしまう。でもお客さまは初めて見るわけだし、技術を見せるのではなく、初心に戻ってシンプルな表現を心がけるのがベストだということだったんだ。この作品はお客さまが想像力を使って、ほかの作品よりずっと大きな関わりをもって見られるもの。パペットが生きて感じているように見えるのも、お客さまがそういう風に見ようと思う心があってこそなんだ。子どものころの感覚を取り戻せるようなところが魅力なんじゃないかな」(カート)
確かに、この舞台の魅力は“シンプル”だということ。セットはごく最小限。そこが観客のイマジネーションをかえって刺激し、ソングマンのストレートに響く声が物語に入り込むのをサポートしてくれる。
「これは観客が、想像力をフルに使って楽しめる作品なの。目の前で起こっていることを見て、それを感じるという演劇本来の魅力をこれほど味わわせてくれる作品はめずらしいと思う。ストーリーに対しても自分の感覚や人生経験を使ってコネクションできるから、きっと誰にとってもユニークで特別な体験になるんじゃないかしら。私はそんな作品に関われたことを、心から誇りに思っているわ!」(デイナ)
「ウォー・ホース 〜戦火の馬〜」は8月24日まで、東急シアターオーブで上演中。詳しい情報は公式HPへ。
http://warhorse.jp/
コラム
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka