コラム:編集部コラム やっぱりアニメはヽ(´▽`)ノ日本が一番 - 第33回
2015年5月27日更新
第33回:期待のスタジオ&ジブリ出身の新鋭監督が手がけた「台風のノルダ」
2年前の当コラムでも紹介したスタジオコロリドの最新作「台風のノルダ」が6月5日から3週間限定で劇場公開。アニメーション界に芽吹く若い才能を、チェックしてみましょう。
2011年に設立されたスタジオコロリドは、1988年生まれの石井祐康監督を中心とした若い世代が集まる新進気鋭のアニメーション制作スタジオ。学生時代に手がけた短編「フミコの告白」や「rain town」が文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で受賞し、注目された石井監督は、スタジオコロリドで初の商業作品として短編「陽なたのアオシグレ」を手がけ、同作は13年に劇場公開されました。「台風のノルダ」は、同社の劇場公開2作目となり、ある離島の中学校を舞台にした青春ファンタジーになっています。
大型の台風が近づく中、島の中学校では明日に控えた文化祭の準備が佳境に。主人公の東(あずま)は、幼い頃から続けていた野球を辞めてしまったことを親友の西条から責められ、ケンカをしてしまう。モヤモヤとした気持ちを抱えていた東は、その時、不思議な少女ノルダとの出会いを果たす。ノルダは「“地の渦”と“空の渦”と“私”がひとつにつながれたとき、この星は生まれ変わる」と謎めいた言動をとり、東は戸惑いながらも傷を負ったノルダを助けようとする。一方、台風はさらに島に接近してきて……。
本作を手がけた新井陽次郎監督は1989年生まれ。スタジオジブリで「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコ坂から」「風立ちぬ」等にアニメーターとして参加し、今回が初の監督作。人物の柔らかな線や心地よさすら感じる色鮮やかな緑や空は、ジブリを彷彿とさせ、東とノルダの出会いは「天空の城のラピュタ」に通ずるところもありように感じました。
監督がジブリ出身と言われれば、どうしてもそうした「ジブリっぽさ」を探してしまうのですが、少女ノルダの正体にはジブリ作品では見られないような設定も用意されているなど、この作品ならではのオリジナリティにあふれた部分も、あわせて楽しめるところ。
スタジオコロリドは、「陽なたのアオシグレ」の後に、YKKやマルコメといった企業とコラボレーションした短編アニメや、フジテレビ系深夜アニメ枠「ノイタミナ」の10周年を記念したスペシャルアニメ「ポレットの椅子」などを制作。今回の「台風のノルダ」も含め、今のところはまだ短編アニメが中心ですが、劇場公開2作目にして早くも東宝(映像事業部)の配給で全国公開というステップに。しかも、これまで発表している作品はすべてオリジナル。
「台風のノルダ」も本編が短いため物足りない部分もあるのは事実ですが、もっと世界観や物語を膨らませた作品として見てみたいと思うところもあり、いつか同社のオリジナル長編劇場アニメが生まれることを期待して、まずは「台風のノルダ」をチェックしてみましょう。
ちなみに「台風のノルダ」とあわせて「陽なたのアオシグレ」も同時上映。主人公の少年ヒナタの疾走する想いを描いた同作も必見ですので、未見の方はこの機会にぜひ。
■「台風のノルダ」
2015年/日本
監督:新井陽次郎
声の出演:野村周平、清原果耶、金子大地
6月5日から、TOHOシネマズ新宿ほかにて3週間限定公開
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