できごと

劇場公開日:

解説

ニコラス・モスレーの同名小説を、「召使」のコンビ、ハロルド・ピンターが脚色、ジョゼフ・ロージーが監督した。撮影はジェリー・フィッシャー、音楽はジョン・ダンクワースと、ともにロージー作品ではなじみのメンバーが担当。出演は「召使」のダーク・ボガード、「ズール戦争」のスタンリー・ベイカー、「激しい季節」のジャクリーヌ・ササール、他にマイケル・ヨーク、ヴィヴィアン・マーチャントなど。製作はジョゼフ・ロージーとノーマン・プリッゲン。

1967年製作/イギリス
原題または英題:Accident
配給:東和
劇場公開日:1969年8月2日

ストーリー

オクスフォード大学の哲学教師をしているスティーブン(D・ボガード)は、妻のロザリンドが三人目の赤ん坊の出産で、二人の子供と実家に帰っているある夜、書斎でタイプを打っていた。突然急ブレーキの音がし、すさまじい衝突音が続いた。車には教え子のウィリアムとアンナ(J・ササール)が乗っていた。スティーブンが駆けつけた時、ウィリアムはすでに死んでいたが、アンナは放心状態だった。そのアンナを家の中にはこびこみ、間もなくやってきた刑事にもスティーブンはアンナが同乗していたことを告げなかった。昏々と眠るアンナをみつめながら、スティーブンは数ヵ月間の出来事を思いおこした。春の終り頃、スティーブンはウィリアムからアンナが好きだとうちあけられた。スティーブンは紹介を申し出たが、ウィリアムは笑いとばした。数日後、すっかりうちとけてあらわれたアンナとウィリアムにさそわれるままスティーブンは一緒に舟にのった。水々しい、のびやかなアンナの肢体がスティーブンの目の前にあった。スティーブンは眼をそらした。舟からおりる時、スティーブンは目測をあやまり水に落ち、自分の運動神経のおとろえを感じるのだった。次の日曜日、スティーブンの招きに応じウィリアムとアンナは、昼食にやってきた。が、そこへスティーブンの同僚チャーリー(S・ベイカー)もやってきた。粗野で強引なところのあるチャーリーをスティーブンは嫌いだったが、追いかえすわけにもいかず、日曜日は一見おだやかに過ぎていった。夕方、スティーブンはアンナと散歩に出た。が、結局、手をにぎることすらできなかった。予定日が近づきロザリンドは実家に帰った。自由を謳歌すべく、ロンドンに所用で出たスティーブンはかつてのガールフレンドを訪ね、ベッドを共にしたが、むなしい気持が残っただけだった。夜、家に帰ったスティーブンは、そこにアンナとチャーリーを見て呆然とした。二人は以前から関係があったのである。がスティーブンは怒れなかった。チャーリーの中に日毎失なわれてゆく若さへの執着をみたからだった。それから間もなく、スティーブンはアンナからウィリアムと婚約したことを聞かされた。それを告げるためにウィリアムは今日、車で彼の家へ来る途中の事故だったのである。間もなくアンナはオーストリアへ帰って行った。ロザリンドも男の子を産み、スティーブンにはもとの生活が戻ってきた。が、あの“事故”はそれぞれの人の心に、何らかの傷あとを残したことは、確かだった。

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映画レビュー

4.5「“できごと”のみを語ろうとする試み」は見事!

2023年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

冒頭、「屋敷を固定カメラで暫く捉えた映像」を見ていると「自動車クラッシュ音の物凄い音」が……という【映像と音】による見事な場面から始まるこの映画、不気味な緊張感が続くジョゼフ・ロージー監督作。

「自動車クラッシュ音」から、なにかしらの事件が起こったような雰囲気の中で、屋敷から歩いて来たダーク・ボガードが自動車に近づいて、自動車の中では男が血だらけ……となっていれば、「これはダーク・ボガードが怪しい!?」と思うのはジョセフ・ロージー監督『召使』を思い出すから…?(笑)

色彩あざやかな風景の中で、学生男女の恋、教師と美人女学生の恋愛問題、不倫、家庭事情、ある人の死、など様々なエピソードを綴ってはいるが、登場人物への感情移入を極力避けて「“できごと”のみを語ろうとする試み」は見事であった。

ネタバレしてしまうと面白くなくなりそうなので、取り敢えず「鑑賞オススメのジョセフ・ロージー監督作のひとつ」ということで…(^^)

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たいちぃ

4.0人間の二面性

2021年10月13日
Androidアプリから投稿

ニコラス・モズリー(作家/父親はオズワルド・モズリー卿)の原作を
ハロルド・ピンターが脚色した1967年英映画
モズリーはオックスフォードに在籍し失望したらしい
顔を踏みつけられるウィリアムは彼の反映か

緑豊かで、勉学(哲学)するには一見理想的な
オックスフォードとスティーブン(ボガード)の田舎の家を背景に
教師とその妻、同僚、教え子の各々の思惑、欲望が見え隠れする

他の作品ではイタリアのお嬢イメージのササールが
(ロージーらしく例によって)お嬢だが、可愛くない
彼女に惹かれる青年と下心みえみえの二人の哲学科の教授(オヤジ)

この教授たちのお嬢アンナへのアピール(左派系学者のお嬢狙いか?)と
テレビ出演等、知名度のマウント合戦もなかなか見苦しいが、ありそう
スティーブンにライバルへの妬みが感じられる

ラストでウィリアムとアンナの間に図々しく、割って入ったチャーリー(ベイカー)よりも
彼の方が下卑野郎であることが明らかになる

職業柄、インテリと判断される二人の哲学科教授の俗物性に笑えるが
ロージーとピンターが自身を投影してもいそう

教授たちの傍若無人が一番邪心のない青年に悲劇をもたらす
これは因果関係的に左派系学者による貴族殺し、にあたるのだろうか?
が、アンナとフランチェスカ(セイリグ綺麗!)の選択に、彼等の前に静かに横たわる「階級社会」も感じられる

事件の後も何事もなかったかのように営まれてゆく(不気味) スティーブンの家庭…

ロザリンドを演じるヴィヴィエン・マーチャントは
当時のピンターの妻であるが二人の関係は終わっていたらしい
製作してるメンバーも 色んな意味で怖い

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jarinkochie