【インタビュー】サモ・ハン・キンポーにとって“武術”とは? アジア・フィルム・アワードで生涯功労賞

2023年3月20日 10:00


サモ・ハン・キンポー
サモ・ハン・キンポー

サモ・ハンサモ・ハン・キンポー)が、アジア全域版アカデミー賞「第16回アジア・フィルム・アワード」(AFA)で生涯功労賞を受賞した。

香港出身のサモ・ハンは、10歳から中国戯劇学院で京劇や武道の稽古を積み、選抜グループ「七小福」のリーダーとしてナイトクラブや舞台に出演する。12歳で映画に初出演を果たし、「燃えよドラゴン」のブルース・リーのスパーリング相手役で注目を集め、監督・主演を務めた「燃えよデブゴン」でカンフーコメディのスターの地位を確立。「ユン・ピョウ in ドラ息子カンフー」やジャッキー・チェン主演作「スパルタンX」などで監督と出演を兼ね、香港アクションの立役者として活躍する。

人気ヒーローシリーズ第6弾「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲」 では監督とアクション監督を兼ね、TVシリーズ「L.A.大捜査線 マーシャル・ロー」(98~00)では主演。ブルース・リーの師イップ・マンの生涯を描いた「イップ・マン 序章」「SPL 狼たちの処刑台」でアクション監督を手がけるなど、精力的に活躍を続けている。

映画.comでは、香港で行われた授賞式の前日(3月11日)にインタビューを敢行。受賞の感想、武術への思いを語ってもらった。(取材/徐昊辰)


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――生涯功労賞の受賞を知った時は、どのようなお気持ちでしたか?

とてもびっくりしました。そして、非常に楽しかったです。私はこの3年間、何もやっていません。もう映画業界とは関係がないんじゃないかなと思っていました。突然「サモ・ハンさん、今年の生涯功労賞はあなたです」と連絡が来たんです。本当に驚きました。だって、アジア・フィルム・アワードのことを全然チェックしていませんでしたから。

――日本では昨年、監督のひとりとして参加されたオムニバス映画「七人樂隊」が上映され、話題になりました。「七小福」のことなどを思い出し、懐かしく感じた香港映画ファンは少なくありません。改めて、サモ・ハンさんにとって“武術”とは、どのような存在なのでしょうか?

武術は、もちろん私の映画人生の中で欠かせない存在です。私は武術の仕事を通じて、映画の撮影現場に入りました。撮影過程、出会った人、そして映画の物語や登場人物、すべてのモノから教わることになりました。武術を通して「自分がどうやって生きていくのか」「どうやって前へ進むのか」。そんなことを常に武術から学んでいます。

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――技術の進歩によって、映画はCGの時代へと進みました。製作側がさほどリアルさを追求しなくなったことで、本物のカンフーを目指す人もどんどん少なくなっています。その一方、例えばトム・クルーズ主演作「トップガン マーヴェリック」「ミッション:インポッシブル」シリーズなどを例にあげますが、観客は“本物のアクション”に対して、予想以上の反響を示しています。もちろんCG描写は悪い事ではありませんが、この傾向をどう見ていますか?

これはまず、製作側が「何が求めているのか」という根本的な問題なんじゃないかなと思います。ファストフードのような作品なのか。それとも職人のようにしっかり作品を作るのか。その目的がとても重要です。ファストフードのような作品を、安く、早く作れるのであれば、私はまったく反対しませんよ。結局、観客が作品を楽しむことができ、興行収入もあがるのであれば、それはとても良い事じゃないですか? 映画製作においては、誰が正しいのか、誰が間違っているのかというものは、非常に判断しにくい。超大作の駄作があれば、インディーズ系の傑作もありますよね。

現代のCGに関してですが、私はとても素晴らしいと思います。ただ、私はCGというものがまったくわからないので、きちんと勉強したいです。CGだけではありません。ほかにも映画界におけるわからない物事は多い。常に色々学びたいと思っています。これまでの知識はもう時代遅れではないかとよく思っていて、とにかく自分が持っているものを新しくしたい。たとえできなくても、“勉強したい”という気持ちはとても重要だと思います。

カンフー映画は、作品によって、全然質が異なりますよね。多くの映画は、ただのアクション映画です。カンフー映画ではない。本物のカンフーを表現しない限り、カンフー映画とは言えないのです。

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――サモ・ハンさんは役者だけでなく、映画監督、プロデューサーなど、多岐にわたる映画の仕事をしています。その理由を教えてください。

私が映画業界に入った時は、ただのスタントマンだったので、やれることはとにかく全部やりました。そこから、色々な現場を経験し、武術指導を務めるようになって、他人を指導することができました。経験を重ねることで、色々な角度から映画製作について、考えることができたので、監督業も始めることにしました。

映画の仕事は、役割によって全く異なると思います。私は、常に自分の学生たちに「映画の世界に入りたいなら、色んな仕事を体験してください」と言っています。監督志望であれば、まず撮影現場の記録係をやってみる。映画のシーンを細かく記録することで、映画に対する理解も深まるわけです。そして、次は助監督。常に勉強していれば、必ず映画監督になれると思います。

私がよく学生たちに言っていることがもうひとつあります。それは「スタントマンには必ず限界が来る」ということ。そのタイミングで、必ず時代に淘汰されてしまいます。しかし映画監督であれば、そして本当に映画が好きなのであれば、たとえ80歳、もしくは100歳になったとしても仕事を続けられるでしょう。

――最後、日本の方々へメッセージをいただけますか?

体を大切にしてください! そして、毎日を楽しく過ごしてください!

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