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綾野剛、「そこのみにて光輝く」で初めて体験した「作品に愛される」ということ

2014年4月19日 11:20

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作品への愛を語った綾野剛
作品への愛を語った綾野剛

[映画.com ニュース]いつしか日本映画界になくてはならない存在としてそこにいる、綾野剛。さまざまな役を巧みに演じるだけでなく、こんな演技もするのかという嬉しい衝撃も届けてくれる。まさに目を離せない俳優のひとりだ。そんな綾野が「いままで関わったどの作品も愛しているけれど、僕たち役者陣が作品に愛された作品」だとひときわの愛を注いで語るのが、主演映画「そこのみにて光輝く」。(取材・文/新谷里映、撮影/根田拓也)

そういう感情を抱くことは「滅多にない」と言う。作品との出合い方も滅多にないことだったようで、脚本を手にして「3行ほど読んだときに風が吹いた」と、そのときに感じたものを言葉にする。

「3行ほど読んだその段階でこの作品をやろうと思いましたし、この役をやるつもりで、達夫を生きるんだという意志を持って、脚本を読みすすめていきました。その感覚は、理屈じゃないんです。この手の作品はそうそう出てくるものじゃないし、簡単に舞い込んでくるものでもない。いろんなことを含めて希有な作品だと思うんです。共演の池脇千鶴さんは非常にデリケートなシーンをなんのためらいもなく演じていましたけど、池脇さんにそこまで思わせた本──佐藤泰志さんの原作と高田亮さんの脚本が見事に調和して、だからよけいになんだと思います。あとは各部署のメンバーを知って、まったく問題ないなって、現場に入るのが楽しみでした」

原作は「海炭市叙景」と双璧をなす故佐藤泰志さんの最高傑作と言われる長編小説。函館の夏を舞台に、生きる目的を失ってしまった男・達夫(綾野剛)と愛を諦めてしまった女・千夏(池脇千鶴)が出会ったことで生まれる愛の形、家族の形を描いていく。その世界で、達夫を生きるために綾野が撮影前に準備したことは「髭を生やしたこと」、撮影現場で望んだのは「お酒を飲むこと」。主にそれだけだった。

「達夫は、髭なんて剃っているような人じゃないと思ったので、生やしっぱなしでボサボサのままでいました。飲んだくれて昼間にパチンコに行って、また飲んでパチンコして、たまに散歩して、またパチンコして飲んで……毎日飲んでいる。偏った意見かもしれないですが、そういう人が髭なんて気にしているはずがないなと。達夫の過去の仕事もああいう感じなので、自分の見てくれはどうでもいいというか、重要ではないというか、そう考えると整える必要はなかった。あとは背中のアザ。アザは台本には書いていなかったことですが、髭とアザ、準備したのはそれくらいです」

綾野の言葉ひとつひとつから感じるのは、その役を生きたいという切なる思い。その思いはよく伝わってくる。けれど、俳優が役に思いを募らせるほど分からなくなることがある。演じるとはどういうことなのか。役者とは何なのか。

「役作りって頭で考えるものじゃないんですよね。ひとりでモノを作っているわけではないし、共演者の反応が変わればこっちの反応も変わる。役作りって、なんて言うか型に近いもの。型って、相手がどういうことをやってきても自分のやり方を変えないということなので、(演技において)それはマイナスにしかならない。でも、あえて役作りという言葉を使うならば、見た目ぐらいです。あとは現場に行ってから。現場で発揮するために役を固めて行かない、フラットで行く。何にでも反応できるように、感情を持って心を持って対応できるように、そのために“用意しない”というのが僕の役作りなんです」

そこのみにて光輝く」は4月19日公開。

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