小林政広監督、映画デジタル化の波に「1本1本がスペシャルであるべき」
2012年7月6日 21:00

[映画.com ニュース] 宮城・気仙沼を舞台にどん底の状態にある3姉妹の再生を描く「ギリギリの女たち」の女性限定試写会が7月6日、都内で行われ、小林政広監督が舞台挨拶に登壇した。小林監督は、「被災地で撮影しているけれど、わりとコメディ仕立ての話なのでそういうことは忘れて楽しんでいただきたい。女性の方々の感想が楽しみ」と肩の力を抜いていた。
「バッシング」「愛の予感」「春との旅」などで知られる小林政広監督が、東日本大震災の被災地であり実家の宮城・気仙沼を舞台に、確執を抱えた3姉妹の愛憎を赤裸々に描き出す。全編わずか28カットで構成されており、冒頭35分間が長回しのワンカットで撮影された。3姉妹を演じるのは小林作品常連の渡辺真起子、中村優子、藤真美穂。
小林監督は、「震災のちょうど5カ月後である8月11日に、気仙沼はずれの唐桑という半島で撮影を始めた。そこに次の住処にしようと買った家があって、5年くらい前にここを舞台に映画が作れないかと本を書いていた。震災後、本を直さなくちゃならなくなったので、とりあえず現地に向かった」と経緯を説明。しかし、「本直しのために盛岡のホテルをとったけど、途中車で通った陸前高田市の現状を目の当たりにして、机に向かっても何も手につかないような状態だった。この状況で作り話の映画をつくれるのかと。だけど、近くのお寿司屋さんに行って、『映画を撮るんだけど、生き残っているのも後ろめたいし不謹慎な気持ち』と打ち明けたら、『みんなそんなの抱えて生きてんだ』って言われ、やってみようかなと思った」と決意を固めた。
冒頭35分の長回しワンカットが話題となったが、「映画がフィルムの時代じゃなくなり、デジタルで作らざるをえなくなったら、どの映画もみんな同じに見えてしまうようになった。映画は1本1本がスペシャルであるべきと思っているので、そういう撮り方を意図的に選んだ」と狙いを明かした。また、「カットを割って撮影していくと、東京郊外で部屋を借りて外の部分だけを気仙沼で撮っても成立しちゃう。せっかくというと変だけど、唐桑というところに来て被災地で映画を撮ってることを感じていかなければいけないと思ったし、役作りを含めて芝居の質やリアリティにかかわってくると思った」と語った。
「ギリギリの女たち」は7月28日から全国で公開。3姉妹に限らず女性3人で来場すると、当日料金1000円で観賞できるキャンペーンを実施予定。
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