「抗えない大きな出来事を前に何をするか」人間の境界 monoさんの映画レビュー(感想・評価)
抗えない大きな出来事を前に何をするか
ベラルーシ、ポーランド両国の思惑に翻弄され、利用される難民たち。国境付近では、ボールのように蹴っては返され、人間的扱いすらされない。紛争などで祖国を追われ、安全に暮らせる場所を求めて来たはずが、たどり着いた場所でも邪魔者扱いされ、どこまでも追いやられる。難民たちはなぜこんなことが起きているのか分からぬまま、ただただ弄ばれていく。その様子はまさに地獄絵図。
EUは混乱に満ちた世界情勢のなかで多くの難民・移民の受け入れを行なっている一方、その反動も大きいはずで、受け入れる国の市民の中でも意見は割れている。人権とは名ばかりで、実態は難民の選別(映画でも中東難民とウクライナ難民との対応の差が見受けられる)が行われ、差別と迫害が続いている。
ポーランドの国境警備隊の軍隊学校でのプロパガンダ的教育と、それに従う者と静かに抵抗する者。難民支援活動家たちの取り組みには頭が上がらないが、心ある者たちの助けだけでは到底解決できる問題でもない。しかし、最後にアフリカからの難民を受け入れた家族や精神科医の女性ように、結局はこうした人の優しさとあたたかさ、そして人と人との連帯が人間を救うのだと思った。
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