劇場公開日 2024年3月29日

オッペンハイマーのレビュー・感想・評価

全780件中、1~20件目を表示

4.0科学者の苦悩を描く映画

2024年4月30日
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鑑賞方法:映画館

原爆の成果を肯定的に描いているわけではない。数奇な巡り合わせで原爆を開発することになった科学者の苦悩を主観的に描こうと試みた作品だ。その意味で原爆についての映画かというと、微妙に違う。あくまで原爆を作った男についての映画だ。鑑賞する時にはそこを間違えない方がいい。
とはいえ、被爆国の日本でこの映画を見るというのは、どういうことかを考えざるをえない。被害が直接描かれないという批判は正当にあり得る。加害者の苦悩と被害者の被害とどちらが大切なのかということは問えるだろう。
ただ、映画を観るというのは、他者を知る良い機会にできる。アメリカで原爆開発をめぐってどんな議論があり、どんなプロセスを経て開発され、開発者は何を葛藤し、戦後どのような目にあったのかを知る機会は手放すべきではない。
ただ、個人的には原爆の被害がどのようなものかより突っ込んだ描写をした方が、オッペンハイマーの苦悩をより深く理解できる作品になったのではないかという気がする。スライドで被害報告を聞くオッペンハイマーの描写があったが、そこでスライドの内容を見せない選択でよかったのかどうか。
日本人なら、あのスライドの内容を想像可能だ。他の国の人々はどうなんだろうか。

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杉本穂高

5.0原爆の表現よりも予備知識の有無で評価が分かれそうな「原子爆弾の父」に関する必見映画!

2024年4月2日
PCから投稿

 本作は「インターステラー」「インセプション」「TENET テネット」などの挑戦的な名作を生んだクリストファー・ノーラン監督作品です。
 ただ、正直なところ見終わった際に「クリストファー・ノーランらしさ」は薄いと感じました。
 一方で、クリストファー・ノーラン監督は、第二次世界大戦初期イギリス、ベルギー、カナダ、フランスの連合軍将兵が、フランスのダンケルク海岸でドイツ軍に包囲され撤退を余儀なくされる「ダンケルク」のような戦争史実を映像化する作品も作っています。
 その意味では、本作は「ダンケルク」寄りの作風と言えますが、「原子爆弾」という未だに賛否の分かれる物を最初に作った中心人物オッペンハイマーを描き出すには3時間という尺をもってしても映像化の難しさを感じました。
 1人の科学者の生涯を描き出すのさえ難しいのに、原爆を生み出したことへの苦悩や、原爆では飽き足らず、より破壊力が得られる「水爆」の開発を進めるアメリカ。それに反対するオッペンハイマー、など内容は盛りだくさんで登場人物も多くなっています。
 本作は、ピュリッツァー賞受賞の書「オッペンハイマー」をベースに作られていますが、映画の物語の中核は、原爆投下で終わらせた第二次世界大戦の後からです。
 ソ連との冷戦の時代へと突入し、水爆の開発に突き進んでいるアメリカにおいてオッペンハイマーが「共産主義国のスパイ」という疑いを持たれて聴聞会で責められているシーンから始まります。
 この構図を利用したのがロバート・ダウニー・Jr.が演じる政治家ルイス・ストローズ。
彼は戦後にオッペンハイマーを、アインシュタインなどがいる「プリンストン高等研究所」の所長に抜擢しています。
 そして、ルイス・ストローズに関する公聴会も、映画では並行して映し出されます。
 これは、見ていると時間軸などが分かりにくいため、ルイス・ストローズの目線で描かれるシーンは「白黒」で表現するなど、「クリストファー・ノーランらしさ」も垣間見られます。
 この効果もあり、助演のロバート・ダウニー・Jr.の存在感を際立たせる事に成功し、アカデミー賞で助演男優賞受賞にまで輝く結果になっています。
 もちろんメインはオッペンハイマーで、聴聞会での自身の説明で、映像は大学生の時にイギリスのケンブリッジ大学に留学したシーンになります。
 このような感じで過去が語られ、同時に公聴会も進んでいく構造になっています。

 これらの現実の事象はかなり入り組んでいるので、それを3時間の映画で描き出すのは困難ですが、割と「シンプルで分かりやすく構成されている」と思います。
 ただ、その結果、展開が早くならざるを得ず、いろんなディテールがバッサリと切られている面はあります。
 象徴的なところは全般的に、通常の映画であれば、もう少し丁寧に説明があるシーンでも、本作ではバッサリと切ってあったりしていて、「こんなの文脈で明らかだよね?」「自分で考えてね」といった感じの、良くも悪くも「クリストファー・ノーランらしさ」があります(これの究極形が前作「TENET テネット」でしょう)。
 また、唯一、原爆を投下された日本としては、日本の描写がない事が気になる人もいるでしょう。
 これについては、「オッペンハイマーに降りかかる悪夢のような映像」として間接的に描かれていますし、尺を考えると仕方ない面もあるのかもしれません。
 個人的には、せっかくの題材の作品なので、むしろアメリカ軍が原爆投下の予行演習として行なった、日本全土を巨大な実験場とした「パンプキン爆弾」の投下を描いてほしかったです。
 1945年7月16日に、オッペンハイマーらが人類史上初の核実験「トリニティ」を成功させる描写はありますが、その直後の7月20日から始まった(長崎に投下された「ファットマン」と同じ重量・寸法で作られた)リハーサル用の模擬爆弾「パンプキン爆弾」を東京、福島、新潟、愛知などで合計49発の投下を行なっていたのです。
 結果として1700人規模の死傷者を出していて、この史実も無視はできないものですが、これも尺を考えれば無理難題なのかもしれません。
 しかも、もしこの「パンプキン爆弾」の投下を描くと、「マンハッタン計画」の責任者であるマット・デイモンが演じるレズリー・グローヴス中将が「原爆を落とすのは2回だけだ」と言い切っている描写に矛盾が生じます。(現実にはグローヴス中将は「8月17日か18日以降の、最初の晴れた日に、日本に原爆を投下できるように準備が整うはず」と、3発目の原爆が用意されているという書簡をアメリカ軍のトップに送っています)

 本作は、基本的に過去をそのまま伝える映画。いわゆる「ネタバレ」が存在しない作品であり、知っておくべき史実を多数みつけることもできます。
 例えば、そもそも「原爆は、ヒトラーが先導してドイツで作り上げられそうだったこと」。
 そして、「アメリカの原爆はドイツを攻撃するために作られていたこと」などです。
 さらには、日本は原爆の影響が強烈なため、原爆で話が止まっている人も少なくない気がしますが、アメリカやソ連は、原爆より破壊力が得られる「水爆」の開発を進めていた現実があるのです。
 本作は、一見するとクリストファー・ノーラン監督以外でも作れそうですが、このネタを3時間で俯瞰して見せることを可能にしたのは、やはり「クリストファー・ノーランらしさ」があったからだと言えそうです。
 そう考えると、第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィ)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の主要7部門での受賞を制したのも納得ですし、「ゼロベースで原爆を考えてみる良い機会を提供してくれている良質な作品」だと思います。

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細野真宏

4.5人類に委ねられ、思考を促す一作

2024年3月31日
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鑑賞方法:試写会

原子爆弾を作り出した天才科学者の人物研究とも言うべき本作は、二つの時間軸を行き来しながら主人公の人となりを描き出す。カラー部分はいわば自分がどこへ向かうのか正確には予測し得ないまま突き進んでいく若き日の世界。対するモノクロ部分は決定的な出来事が起こった後、自らが何をもたらしたのかを知っている世界。同一人物の似て非なる二つの側面によって物語を組み立てたノーランの試みが実に興味深い。科学、政治、軍が歯車のように動き出し、止められなくなる構造が現代世界をも貫く刃のように胸をえぐる。そして一人称ならではの語り口で主観や内面を描きつつも、投下直後の研究所の様子に象徴される「実際に起こった場所から程遠い距離感」が刺のように刺さって抜けない。観賞後にのしかかるのは重く、答えのない複雑な思い。人類の限界や無力を感じたならきっとそれが始まりだ。これはあらゆる意味で観客に命題を突きつけ、思考を促す作品である。

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牛津厚信

4.5映画作家ノーランのネクストレベル。

2024年3月31日
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村山章

4.0主観映像炸裂のノーラン映画に応える術は?

2024年3月30日
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鑑賞方法:試写会

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興奮

難しい

原子爆弾の開発に成功した理論物理学者、オッペンハイマーが、アメリカの国家戦略に巻き込まれていくプロセスを、クリストファー・ノーランは3つの時間軸を行き来しながら描いていく。時間軸への執着はこれまでも『メメント』『ダンケルク』『テネット』等でも見られた手法だが、今回は3時間の物語の中で主に16人、脇を入れると50人以上の実在の人物が入れ替わり立ち替わり現れて言葉を発するため、観客の動体視力が追いつかない。人にもよるだろうが、それでも集中力はギリギリ維持できる。

理由は、ノーランが徹底してオッペンハイマーの主観に観客も巻き込んで、彼を取り巻くカオスを彼の視点で体験できるように工夫しているから、だと思う。客観ではなく、主観。それは、オッペンハイマーをしばしば悩ませる何かがチラチラと発火し、爆発するような幻覚や、原爆投下後の惨劇のイメージに代表される。演じるキリアン・マーフィーのあまり他者に興味がなさそうな表情や、その割りにはいつも見開かれた青くて大きな瞳が、殺人兵器の製造に関わってしまった人間の虚しさと迷いをうまく表現している。それだけに、見ていて複雑な気持ちにもなるのだ。

オスカー受賞後にノーランと会談した山崎貴監督が言っていたように、このモヤモヤを解消する方法は、山崎監督でなくても、誰か日本人の監督が、日本人の視点で、改めて原爆を描くこと、それ以外にない気がする。

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清藤秀人

4.5IMAXで体感することを推奨したいノーラン渾身の勝負作

2024年3月29日
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鑑賞方法:試写会、映画館

悲しい

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知的

まずは日本配給を買って出た中堅の配給会社ビターズ・エンドに感謝を表したい。原爆開発者の伝記映画でありながら広島・長崎の描写がないことや、映画「バービー」との抱き合わせキャンペーン“バーベンハイマー”をめぐるSNS上での騒動などがあり、日本の大手配給が米公開から4カ月以上沈黙するなか、米アカデミー賞ノミネート発表1カ月前の昨年12月にビターズ・エンドが配給を決めたのはまさに英断だった。広島・長崎の描写の不在については、オッペンハイマーの視点で描く物語だから当人が見ていない原爆投下を描かないというのも一理あるが、1億ドルもの巨費を投じて米国の製作会社が作る大作ゆえ米国市場での評価と興行的成功が重要視された(そのためネガティブな反応を引き起こしかねない原爆による凄惨な殺戮の描写はぼかされた)点も見過ごされるべきではないだろう。米国側の視点・史観に立った映画を日本人が観てさまざまな意見を持つのもまた当然で、健全な議論のきっかけになればいい。作品を見ずして賛否を論じるのは不毛でしかないが、日本公開されるおかげでそれは避けられた。

クリストファー・ノーランは映画館でなければ得られない鑑賞体験を提供することに人一倍こだわってきた監督で、そのための有力ツールであるIMAXの画角を効果的に使った映像も見所のひとつ。過去作の「ダンケルク」では縦方向の動きを見せるショット(戦闘機同士の空中戦や、船から海に飛び降りる兵士たちなど)で活用されていたが、本作でのIMAX映像はまた一味違う。オッペンハイマーに扮するキリアン・マーフィ(頬がこけるほど激ヤセして熱演)の顔を画面いっぱいに映し瞳や表情筋の微細な動きを透過して心理状態にまで肉薄するかのようなショットや、オッペンハイマーが物理学的真理を追求する思索のイメージ、原子爆弾が世界に連鎖的な破壊をもたらす悪夢のような空想を、観客はIMAXのスクリーンからまさに全身に浴びるように受け止めることになる。

オッペンハイマーによる視点がカラー映像、ロバート・ダウニー・Jr.が演じるルイス・ストローズなどオッペンハイマー以外の視点がモノクロ映像と使い分けられている点は、本作を直感的に理解しにくくしている要因の一つだ。これもまた、一度観て理解できるような単純な映画でなく、繰り返し鑑賞することで理解度が高まる奥深い作品を追求するノーラン監督の挑戦の途上なのだと感じる。

アカデミー賞7部門受賞に関して、視覚効果を巧みに使ったSF大作でヒットを連発した監督がのち史実や歴史的事件を題材にしたドラマ作品で作品賞などの受賞を果たすという流れでは、リドリー・スコット監督の「グラディエーター」、ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」の先例にならうものであり、ノーラン監督もオッペンハイマーを題材に選んだ時点で当然意識し、オスカーを獲る勝負作として臨んだはず。そしてこのコースに沿う次なる最有力候補は現在「デューン 砂の惑星 PART2」が日本公開中のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だろう。ヴィルヌーヴ監督の待機作については、「デューンPART2」にも出演しているゼンデイヤが主演で「クレオパトラ」が今年製作開始との報道も。必勝コースに乗って「クレオパトラ」で初受賞となるか、あるいはそれ以前にSF大作で獲得するのかも楽しみだ。

ノーラン監督と対談した山崎貴監督が、「日本が(「オッペンハイマー」への)返答の映画を作らねばならない」と宣言したという記事も興味深く読んだ。「ゴジラ-1.0」がアカデミー賞視覚効果賞を受賞したことで、山崎監督には国外の著名監督から視覚効果監督のオファーや、ハリウッド作品の監督としての依頼がきっと来るだろう。国際的な実績を積み、いつか日本側の視点で原爆を題材にした大作を世界に発信してくれたらと期待する。

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高森 郁哉

4.5Chilling You Can't Call It Sci-Fi

2024年3月6日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

興奮

Nolan eerily evokes The Prestige's "Are you watching closely?" in a similarly themed story about a scientist trounced by his creation. As for historical accuracy, the film doesn't contradict anything in the Hiroshima Peace Museum and dispels common US myths such as that the Japanese were warned prior. The sound is the film's strongest game. The cosmos began with a bang and will end with one too.

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Dan Knighton

4.0非常にストレス値が高い

2024年5月10日
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日本人としては、そうなることなんて最初から予想できたじゃないか!と言いたくて堪らんのですが。
最初はみんな抑止力っていうのよ。ドラえもんでもやってたもん!
あの実験をみた人達は、あれで戦争がなくなる、平和になると本当に思っていたんだろうか。

自分の成果や主張がいつの間にか自分の手から擦り抜かれている感じがもの凄く怖い。
そしてそれに追い討ちをかける音響演出。あぁー削られるー
さらに現実の軍拡路線も相まって、大変にストレスフルな鑑賞なのでした。

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Peinyo

4.0アメリカを知る?

2024年5月9日
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悲しい

怖い

難しい

原爆の開発者の苦悩を描くというより、彼の半生を通じて、第二次世界大戦とその後の世界に対するアメリカの揺れ動き、それは冷戦後の世界にも影響している事を改めて知る映画だったのでしょうか?

クリストファーノーラン監督はさすが、1秒も飽きさせません。が、それは作品の素晴らしさでなく、巧みな演出、音楽の緊張感だったのか?

食わず嫌いせず、日本人として向き合うべきテーマ(アメリカや連合国からの目線、当時の日本の得体ない気味悪さ)を扱った映画でした。

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マーベリック

3.0アホなんで理解できたのか?できなかったのか?

2024年5月9日
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タイトルの通りです。

時代も場面も違うシーンが変わるので、前半????って感じで、ついていけなかった気がします。
後半は前半よりは引き込まれました。

バイオリンの奏でる音が感情を逆撫でする感じは、とても効果があったと思います。
IMAXで観た訳ではないのに、爆発のシーンや足音を鳴らすシーンでは、とても効果的に音が攻めてきます。

頭の良い方なら、一回で理解できるのかな?

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ぷぷぷ

4.0背景が分かっていた方が

2024年5月9日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

オッペンハイマーをはじめ、登場する人物や、作品の時代の背景や、世界情勢を知ってから観たほうが、さらに見応えが増したと思う。

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ちーきー

4.5「自分の研究に自信を持つ」

2024年5月9日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

今年77本目。

自分の研究に自信を持つ。
エミリー・ブラントの質問に対する受け答えの凄さ。原爆と水爆どちらにするかの攻防も目が離せない。原爆を作るまでと戦後の取り調べ2つが重なって、映画見てから翌日に3時間に気づきました。長いのは知っていましたが中盤から話がどんどん展開して行っていい。

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ヨッシー

4.0待望

2024年5月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

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ゆい

4.5「日本人が観るべき」「映画館で観るべき」は正しい

2024年5月9日
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鑑賞方法:映画館

この映画は日本人とそれ以外では大きく印象が違ってくるだろう。日本人としては言葉では表現できないような悲しい場面が何回かあるが、これを映画館で目を背けず観ることが、我々にとって大事なことのような気がする。映画だから脚色されたり史実と異なる部分もあるのだろうが、それは些細なことかもしれない。

彼は1960年に東京や大阪を訪問したらしい。広島や長崎への訪問の意思があったのかは知りたいと思った。

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にこにこどり

4.0どんなものであっても作ってしまうのは人の業なのか

2024年5月9日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマーの半生記。
結構、難しい映画だと思います。NHKの朝ドラみたいに見て楽しい、気持ち良い話ではありません。しかし、それでもなお、何か心に訴えてくるものはあります。

私が見て感じたのは、オッペンハイマーには原爆開発に対する後悔はないだろうということ、赤狩りの時代に理不尽な目に遭っているということ(ただ、それが彼自身の女性関係、人間関係によるところは大きいです)、原爆投下に関しては少しばかりの後悔と自責の念をもっていそうということ。主にはその3つです。
ナチスよりも早く原子爆弾を持つという目標に向けて科学者軍団を指揮して成功に導いたこと。実験成功の瞬間は誇らしいものだったと思います。世界で初めての新型デバイス(彼らにとっては原子爆弾というよりも実験デバイス)が動作したことは素晴らしい経験だったでしょう。私自身も技術屋でしたから、世界初の新型デバイス開発はスリリングですごいプロジェクトだったことはよくわかります。
しかし、それができたのはナチス壊滅後でした。その後、日本に対してそれが投下されたこと。多分、この時まではオッペンハイマーに何ら良心の呵責はない。実際に被害を知った時には多少は後悔を感じたかもしれません。でも多少です。彼の水爆開発反対の姿勢は原爆被害のことを考えてのことではないと思えますし、そういう自責の言葉も出ているようには思えません。ただ、これはあくまで伝記。実際に遺された言葉や著書ではどう言っていたのか、少し気になりました。

 映画の構成は、プロジェクト時代、機密アクセス権(?)についての聴聞会、そしてとある政治家(?)の役職任命に対する公聴会の3つの場面がほぼ同時進行で、登場人物も多く少々わかりにくい。それでも最後まで3時間しっかり見れたので、一応、及第点は取れていると思いました。もう少しだけ予習しておいた方がわかりやすかったかもしれませんが、予備知識はなくても全体の雰囲気として見るなら問題ないでしょう。ただ、出てくる人が多いので、こいつ誰だっけとなるのは仕方ないです。

 この映画における「プロジェクト」のようなものは、今でも起こりうる可能性はあると感じます。実際オッペンハイマーらの反対など関係なく水爆は開発されました。幸いなことに水爆が軍事的に使用された例はありませんが、大気圏中の爆発実験で放射能汚染事故(第五福竜丸事件)を引き起こしています。開発テーマなどいくらでもあります。AIを使ったロボット兵器(ターミネーター)、新型コロナのような細菌の類、人間を強化するような遺伝子改良(ガンダムの強化人間)、そして私たちが知らないような未知の技術領域など・・、こういうものが現代でもどこかで秘密裏に行われているかもしれない。オッペンハイマーたちのように使命感に燃えた科学者・技術者によって・・・。そう考えると、とても空恐ろしい。そういうものをやらずにはおれない「人の業」のようなものに怖さを感じてしまいます。我々の住む世界は、思っているほど安全ではなく、結構危うい状態にあるんだと改めて感じてしまいました。

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すみれ7878

4.0この映画を見事にしている3つの柱

2024年5月8日
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komagire23

3.5鑑賞後復習が必要、予習もすれば尚理解が深まる

2024年5月8日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

史実を元した作品なので、事前にオッペンハイマーについて予習をしてからの鑑賞がおすすめ。
予習は科学の知識等では無くその時代の共産主義についてと、原爆開発後のオッペンハイマーについてを調べてから鑑賞すると3時間の長編の後半もダレる事なく鑑賞出来るのではないかと感じた。

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Kei6

4.5緊張感ある伝記映画

2024年5月8日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

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たーちん

4.0★4.1・・・4.2・・・で迷うくらい

2024年5月8日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

基本的にネタバレが嫌いで人の感想(面白かった、怖かった等)すら観る前は知りたくないタイプなので何も予習せずに観て大失敗。
これだけは絶対に予習してから観に行くべきだった。
必ずリベンジしたいと思う。

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リバー

4.5よき

2024年5月8日
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GWやっとクリストファー•ノーラン監督の映画を鑑賞
難しい題材に挑戦したなと思ったけどよかった!
偉そうにごめんなさい
考えさせられる映画というものはいいですね

あとキリアンマーフィー本当にいい役者さんになった
題材的に難しいから感想は人それぞれだけど、スクリーンで観る映画です

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Makati