劇場公開日 2024年3月15日

「冒険の素晴らしさよりも、その無謀さが気になってしまう」FLY! フライ! tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0冒険の素晴らしさよりも、その無謀さが気になってしまう

2024年3月16日
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確かに、人生に冒険は必要だろうし、広い世界を見ることも大切だろう。
だが、あれだけ池の外に出ることに慎重だったカモの父親が、ほんの思いつきで、何の準備もせずに、家族を旅に連れ出そうとする行動は、「冒険」というよりは「無謀」としか思えない。
そんな父親の突然の「キャラ変」も気になるが、反面教師として、孤独を愛していたはずの伯父さんが、旅の一行に加わるという流れにも釈然としないものがある。
父親が恐れていたように、道中は危険に満ちていて、いつ肉食の鳥や獣に襲われてもおかしくないはずなのに、出会ったサギやハトが、みな良い「人」ばかりというのも、随分とご都合主義に感じられる。
最大のヴィランである人間のシェフにしても、ジャマイカのオウム?をカゴで飼っていたことは別として、沢山のアヒル(カモ?)を買い取ろうとしていたのは、調理人としての生計を立てるためであり、趣味や道楽で無用な殺生をしようとしていた訳ではないだろう。それを、極悪非道の悪人のように位置付け、ヘリコプターを乗り回す悪の組織のボスのように描いていたことには、違和感を覚えざるを得なかった。
結局、カモの一家が、ポジティブ思考と家族の絆だけで危機を乗り切ってしまうという展開は、能天気でおめでたいとしか言いようがなく、話としての「底の浅さ」が気になってしまう。
ファミリー向けのお気楽な冒険譚に目くじらを立てる必要はないのかもしれないが、そこに、子供たちに無謀な冒険をそそのかすようなメッセージがあるのだとしたら、少し無責任にも思えるのである。

tomato