夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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胸の中が柔らかな大切な光で少しずつ満たされていく
鑑賞前、私の頭にはどこか闘病ものというイメージがあった。それゆえ、観た後に引きずるものがあるのではと躊躇する気持ちがあったのも事実。しかし本作はそんな先入観を序盤から拭い去り、じっくりと主人公たちの日常に寄り添っていく。切々と語られる上白石の声のトーン。ふりしきる雨。どうしようもない、逃げ出したくなる会社での一幕。その雨がやんだ時、彼女はとある教育玩具を製造する小さなメーカーにいる。変わらず苦しみはやってくる。だが隣の席の同僚もまた別の理由で苦しんでいることを知る。また観客は彼らのみならず、誰もが何かしらの事情を抱えて生きていることを垣間見る。そういった部分を内に秘めているからこそ、人は誰かの苦しみを察し、さりげなく共に寄り添い合うことができるのではないか。ゆっくりと一歩ずつ。地球の自転を感じるかのように時を刻むペースが心地よく暖かい。夜が明ける。胸の中に柔らかな光が差し込んでくる一作だ。
抑揚のない退屈なドラマ
各々精神疾患(PMS(月経前症候群)・パニック障害)を抱えて、人付き合いが下手でぎこちない日々を送る会社の同僚の二人、上白石萌音扮する藤沢さんと松村北斗扮する山添くんを主役に据え、その窮屈でもどかしい互いの日常を粛々と追った作品です。
カメラは彼らに同情的でもなく、フィックスの長回しを多用し、寄せアップも殆どなく、ゆったりとした緩いテンポで淡々と、まるでドキュメンタリーのように映していきます。しかし彼らが抱える、病気による苦悩や悲哀は描かれないので、鋭く問題提起するわけでもなく、終始メリハリのない滔々とした映像が延々と続きます。ラブロマンスはなく、謎解きミステリー要素もなく、サスペンス性もありません。つまり起承転結のない2時間のドラマが本作といえます。
それでも前半は、藤沢さん視点で映されていきます。そこでは山添くんも藤沢視点で胡散臭い客体の一つとして描かれますが、中盤藤沢さんが山添くんの整髪をする長回しカットから山添視点にカメラが移り、藤沢さんも面倒くさい人として映されつつも、暖かく見つめられていることが感じられます。
そして徐々に二人の視点が重なり合っていきますが、決して恋愛関係には至らない淡泊な関係のままエンディングを迎えます。
斯様に抑揚のない退屈なドラマで、その上、登場人物が悉く善人ばかりなので、事件もなくハラハラドキドキすることもなく、ただただ安心して観ていられたに過ぎないのですが、不思議に飽きることなく観賞できたのは、リアルな生活感を実演した役者たちの演技力によるのでしょう。
ただ、つい近所でもありそうな、あまりにも身近な話であり、夢やロマンといった快感は得られず映画的なスケール感は全くありません。巷間、非常に高評価なのが、率直に言って私にはよく理解できません。
一服の清涼感は得られた気はしますが、非日常空間である映画館で観客に披露する作品とは言い難いと思います。
映像作品としては悪くはありませんが、BSでのドキュメンタリー風ドラマが向いているのではないかと思ったしだいです。
温かい世界観
原作者である瀬尾まいこさん特有のあの温かな世界観がそのまま映像化されていて本当に嬉しかった。
瀬尾まいこさんの作品に触れると陽だまりの中にいるかのような気持ちになり読み終わると心にじんわりと温かなものが残る。映画では陽の光をとても繊細に映していて、作品を読んだときのようなぽかぽかした気持ちをそのまま視覚化してくれたかのような新鮮な気持ちになった。
原作とは随分と話の展開が異なっていたけれど、この物語の芯となる部分はぶれずにちゃんと伝わったし映像だからこそ感動できる素敵な演出も沢山あってよかった
自分の気づかないところでみんないろんなものを抱え込んで生きていると思うし自分自身もまた、他人には言えずに抱えているものは確かにある。
自分で自分を助けられなくても、自分が助けられる人たちは周りにいるはずだ。
この作品の温かさをちゃんと心に温存して今日から自分が生きる世界に持っていきたい。
ADHDとPSMを持つ私より。
あの世界は理想郷だけど、この映画と出会えたことは理想郷への入り口だった気がする
生きづらさを描く作品が増えてきて、天邪鬼もあり観るのを先送り。
その人の苦しみに共感でも、受け入れるでもなく「寄り添う」。静かに、誠実に、温かく物語が描かれているからこそ、胸の奥にストンと登場人物の言葉が落ちてくる。
PMSしんどいよ、どうしても強く当たってしまう。
ADHDしんどいよ、どうしても集中できない。
強く当たってはいけないことを覚えておけない。
今にも崩れそうななかで、どうにか踏ん張ってる。
そんな私に、そんな誰かに、この映画自体が寄り添ってくれる。本当にありがとう。周りが敵に見えても、きっとこの映画だけは味方でいてくれる。
太陽と星と差し入れ
上白石萌音さんを初めて見たのは、映画「舞妓はレディ」でした。その頃から演技も歌もダンスも上手だった。今回のこの映画でさらに素敵に深く大人になったなあと思いました。
ストーリーとしては恋愛系にならなかったことが良かったし現実的だったし、主役の二人だけでなく登場人物のそれぞれが痛みや悲しみを抱えていることにとても共感できた。
上白石萌音さん演じる藤沢さんのような、自分自身お菓子が大好きで差し入れもマメで上手な人は凄いなあと尊敬します。方向音痴でも空を見上げて、昼間は太陽の位置で、夜は星を見て自分がいる場所、向かう場所がわかる・・・はずなのにできない自分に少しがっかりします。
私にとっては大切になった時間
誰もが同じ気持ちになる、そんな映画ではないように思えて。
逆にこの映画でしか受け取れない独自性は、その芯に確固たるものとしてある。
そんな印象を受けました。
淡々とした生活の中でも、それぞれに生きづらさを感じる所はきっとあるけれど、
それを他人と共有する場合もそうではない場合も、何か生きづらさを感じていることを
分かってもらえたら嬉しい。
社会の一員として存在するからには、さすがに個人的な事情や感情ばかりを
表に出すことはもちろんできないのだけれど、
それでもお互いに補い合うことが出来る。
理想論かもしれないけれど、それでもそういう世界が、存在していたなら。
物としての豊かさよりも、心の豊かさや人との繋がりを改めて温かく感じることが出来た
素敵な映画でした。
暗くなるテーマなのに全く暗くない
でも松村北斗がプラネタリウムに元上司を誘う場面の顔、あれどういう顔なの。
悔しいのか悲しいのか、嬉しいのか全くわからなかった。なんで泣いてるの?とか言われてね。むかついてるのかと感じたよ上司が。
そこだけ理解できなかったな。
まあ悲しい顔だったのかな、、。
松村の再就職先を嘘で繋いでたけど、そんなの用意できるわけねーのに口先だけで言っていたわけだしね。
全般的にかなり面白かったし、物語全般で選択のミスをしている藤沢が最後の最後もミスしたっぽいのが皮肉くさい。
私なら藤沢の転職を確実に止める失敗しか見えないから。でも個人の選択としてはこれでいいのだろう。
優しい映画
監督の人を見る目の優しさが映画全編に流れてる。ただ私は、世の中ここまで人に優しい人間ばかりではないと、少しおとぎ話的に観ていたのでリアリティはそれほど感じなかった。
自分は汚れてしまった人間なんだなぁ、と。
純粋な人たちが観る為のいい映画だと思った。
幸せに暮らすために
PMS(月経前症候群)という病気で突発的にイライラして、周りにあたってしまうヒロインを上白石萌音。彼女の同僚となるパニック症候群のイケメンを村松北斗が演じます。
初めは、お互いを理解できない二人ですが、徐々に歩み合い、一緒に会社のイベントを作り上げる。互いの病気のことも、性格も分かり、良き理解者になっていく。
じゃあ、この二人が恋人になるのか?というと、上白石は母親の介護のため、会社を去り、村松は会社に残る選択。特に大きな盛り上がりがあるわけでなく、穏やかな日常に戻っていく。
地味ですが、とても味わいのある作品です。二人が働く理科の教材を作る会社がかなり丁寧に描かれます。二人とも前の会社では、病気や発作のため上手く働けなかったのが、この教材会社では、周りの支えで認められて活躍する。だからこそ、二人の成長や幸せを築いた会社をちゃんと描きたかったのかな。
この二人の関係も、恋人でも家族でもなく、友情以上のおせっかいな関係。単純に言えば「助け合い」なのですが、こういう関わり合い方がかけているのかな、とも。
あと、あえて「病気」という言葉を使いましたが、元気いっぱいでなくても、幸せに暮らせる世の中でありたいですね。
相互理解には全人的な愛が必要
原作を読んで、パニック障害とPMS(月経前症候群)の男女が、お互いの病気を理解し合い助け合う様がとても印象に残った。男女いや人間は、お互い表面的に見せてる部分で良好な関係を維持しようとしがちだ。裏の部分はなるべく見たくない。その裏の部分で相互理解をするには、恋愛とか夫婦愛とかではなく、全人的な愛が必要なんだと痛感する。
映画では、松村北斗と上白石萌音のキャラが、この相互理解のモードに見事にマッチしていた。
脇を固める、ふたりの職場の社長役の光石研、母親役のりょうらも、そのモードを踏襲していた。
会社という組織においては、なかなかふたりの病気は理解されないだろうけれど、原作と同じくそこを暖かく包みこむ会社の存在があり、とても安らかな気分になれた。
人の痛みに寄り添うこと、人を理解すること大切さを感じさせてくれた、三宅監督の心優しき映像も、いつまでも心に残った。
優しくて、あたたかい
他人の人生を近くから見てるようなそんな映画。この映画を見て、劇的に何かが変わるわけでも、大きな何かが得られるわけでもない。でもちょっとだけ人に優しくなれるのだと思う。ここからは個人的に、ですがカムカムコンビの再演がとても良かった。この2人の演技があってこそ、この作品の柔らかさと優しさが出てる。
自分自身を受け入れて生きていく
自分ではコントロールできない心や体の障害を抱える人達が、それを受け入れて生きていくやさしいストーリー。
重たいテーマなのに、なぜか穏やかでどこか自然で
最後にはみんなの顔が生き生きしているのも良かった。
プラネタリウムの美しい星空にも癒されました。
観る度に違った印象を受けそうな作品
視覚効果が印象的な作品だった。日常がフラッシュバックするような、どこかで経験したことのあるような場面がいくつかあって
あれ、なんか知ってる、って感情に度々なる作品だった
映画のことは詳しくないので正解かは分からないけど、
繰り返しのBGMと情景描写が多くて、特に情景に関しては一点から捉えて景色をぼーーっと眺めているような感覚を与えた
そのぼーーーっという時間の中には、それぞれ何を考えるんだろう
観る人によっても違うし、観るときの心によっても変わってくるんだろうなと思った
そう言う意味で、何度見ても違った印象を受けそうな作品だなぁと思った
内容に関しては、私の感想は多分捻くれた間違いなのだと思うけど、率直に、病名ついてるのいいなぁ。って思った
病名がついているから人が心配してくれる、正当化できる、そこには辛さの反面、楽さがあると思うんだよね
私も自分をうまくコントロールできない
けど、それって単なる甘えであるし、やらないだけ、とも捉えられる
自分でもよく分からない。本当にできないのか、本当に辛いのか、
よくわからない
ただそれに正当な理由をつけてもらえることは自己肯定になるし、出来ることとできないことの見分けがついて生きやすくなるんだろうなぁと思った
その点で、いいなぁと感じた、
思えば、もしかするとあのとき苦しくなったこと、電車でうずくまったこと、訳もなく悲しくて泣いたこと、必要以上に人に当たったこと、
たくさん思い当たる節があったし、自分と重なる部分があった
けどその部分が果たして病気の部分であるのか、人間とはそういうものなのか、は分からないじゃない
私は結局いつまでも生きづらいままなんだなと悲しくなった
絶賛な評価に期待してたわりには、、な印象 入りがナレーションとクレ...
絶賛な評価に期待してたわりには、、な印象
入りがナレーションとクレジットで映像に入り込みにくい感覚で、文字表記もあったりと思ったより病気の説明が強め。
主人公の挨拶しないとか歩きながらみかん食べるとか普段の行動が理解しづらかった。
エキストラがやけに目につく写り方してのも気になった。
病気の理解と共感が難しい色んな人がいるってことを知ることがこの映画の趣旨でもあるのかな。
後半は比較的一気に心地よく進んだ。
病状を緩和させるのは医者でも薬でもなんとか療法でもなく、理解し助けようとしてくれる"人"。
最近やたらめったら病名つけられるけど、病名は主張する物にならなければ、自分を安心させられるし相手に知ってもらいやすい良い物だと思う。
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