劇場公開日 2023年4月7日

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「センスだけが突っ走って他が何も追いついていない」世界の終わりから SSYMさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0センスだけが突っ走って他が何も追いついていない

2023年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

途中何度も席を立ちたくなった。席が奥だったので周りの観客に悪いと思ってしなかったが、出入り口付近の席だったら間違いなく帰っていた。

とにかく薄っぺらい。
神は細部に宿るという言葉があるが、「世界の終わりから」はその全く逆。設定から台詞、絵作りまであらゆるディティールが雑すぎて映画の世界に入っていけない。いちいちどのシーンが~とか挙げたらきりがないほど、というかそんなシーンしかない。

まず説明台詞が多い。映画なら絵で伝える努力をしろよと。そして台詞が多いのに、監督であり脚本も書いている紀里谷の言葉に対する意識が雑なので台詞の力も弱い。空虚な言葉が上滑りしていく。

小道具やビジュアルにもこだわりを感じない。特撮のキャラクターがどっかで見たことあるようなビジュアルばっかり。都会というか東京の街並みがよく出てくるけど必然性を感じない。都内だとロケしやすいから、とかあおりでビルを撮ったらなんかオシャレじゃろ?みたいなそんなふわっとした理由しか感じられない。夏木マリの湯婆婆とかギャグでやってんの?映画じゃなくてコントだったらおもしろいね。あのピタゴラスイッチはなんなんだよ。なんで秘密基地が商店街にあんの?もう挙げたらきりがない。

ストーリーはいまさらエヴァかよって感じ。庵野監督が手掛ける作品には様々な評価があるだろうが、彼のオタク的な細部へのこだわりは誰もが認めるところだと思う。この細部というのは、つまり映画的な「はったり」のことである。フィクションははったりをかまして観客を騙さなければならない。「世界の終わりから」にはそのようなはったりが全く欠けている。超絶劣化エヴァ。紀里谷監督は怠け者だと思う。

描こうとしたテーマだけは今の時代に合致している。雰囲気もいい。まあ、この監督の作品っていつもこんな感じだが。
タイトルでセンスが突っ走ってると書いたが褒め言葉ではない。こんな黴臭いセンスを恥ずかしげもなく披露できる鈍感さが羨ましい。

SSYM