劇場公開日 2022年12月2日

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「「とりあえず凄いものを観た」、という強烈な印象は確実に残る一作」マッドゴッド yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「とりあえず凄いものを観た」、という強烈な印象は確実に残る一作

2023年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の監督、フィル・ティペットはストップモーション・アニメーションの巨匠として(彼の開発した技法を指して、「ゴー・アニメーション」と表記する場合もあるようですが)様々な名作に参加し、『スター・ウォーズ エピソード』(1977)のミニクリーチャーのチェスなど、誰もが知る名場面を創り出しました。そんな彼が情熱と執念を傾けて、なんと約30年もかけて作り上げた作品が本作です。

ティペットのアニメーションは単にかわいらしいものではなく、おどろおどろしさも含まれていることは、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)などで理解したつもりではいましたが、彼の頭の中を具現化したら、こんなになっちゃうのね、と言葉を失うほどの奇怪さ。近年のストップモーション・アニメーションの大傑作として、『JUNK HEAD』(2021)があり、こちらもその世界観の異様さには最初に驚かされたものだけど、それでも本作のインパクトは強烈で、丹念に作られたあらゆるカットが、(忘れたくても)忘れられなくなるほど脳裏に焼き付きます。

主人公と覚しきキャラクターの、一種の地獄巡りであることは分かるんだけど(このあたり『JUNK HEAD』と奇妙に符合しています)、ナレーションなどはほとんどないので、観客はただただティペットの作り上げた世界を味わうのみ。グロテスクな描写も包み隠さず(というか、かなりあからさまに)描写しているので、誰にもおすすめできる作品ではないけど、頭に強烈なイメージをインストールしたい!という人にはひとまずお勧めです。

世界観を受容できないと楽しめないかも知れないけど、受け容れてしまえばたちまち大傑作に変貌する作品です。

また資料集としてもそのデザインの秀逸さからしても、パンフレットは購入おすすめ。

yui