劇場公開日 2023年6月2日

  • 予告編を見る

「述べたいことは理解するが、気分を害する方も出るかな…。」共に生きる 書家金澤翔子 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5述べたいことは理解するが、気分を害する方も出るかな…。

2023年6月4日
PCから投稿

今年180本目(合計831本目/今月(2023年6月度)5本目)。

映画というよりはドキュメンタリー映画であり、ここの予告編や公式サイトにあることがほぼすべてになります。映画館で見ることができる映画は、それを映像化したに過ぎないからです。ドキュメンタリー映画であり、「最初に現在を描き、次に出生から」を描写するという点では「時間ずらし」が存在しますが、これで混乱する方はいないのではないか…と思えます。

 趣旨としては十分理解できるし、ダウン症患者さんの職業選択の自由ほかの論点に踏み入った点は理解できるものの、「2022~2023年の当事者を取り巻く人権意識」を考えると、妥当性を欠く部分もあります。

ストーリーの紹介(映画の評価)も難しく、淡々と生い立ちから現在(コロナ事情が終結する少し前まで)を描く「だけ」なので、ストーリーというストーリーが存在せず、「映画かな?」と思える点もありますが、じゃ美術館で流すのかというとそれも違うし、まぁ「映画館でやっていれば映画」ということになろうかと思います。

 採点に関しては下記を考慮して4.7を4.5まで切り下げたものです。

 -------------------------------------------------------------------
 ※ 当人、およびその保護者は現在も存命であるため、映画視聴の感想における「妥当ではないかな」と思う点を述べるものであり、人格攻撃(人身攻撃)の意図はないことは明確にしておきます。

 (減点0.3/「身障者は行方不明になると警察が来てくれるでしょう?ある日定時になっても帰ってず心配して…」「結婚もできないのだから、せめて20歳の時くらいは…」などの発言全体について)

 ・ 身障者であろうが何であろうが、行方不明であれば警察は動きますので、身障者に限った話ではありません。なぜにそこで「身障者」を持ち出したのが謎です。また、身障者が結婚できないというのは、誰の思い込みなのでしょうか?(健常者に比べると率は下がりましょうが、ゼロではないはずです)。どうもこの映画の保護者(母親)、「身障者」=「ダウン症」というようにとらえているフシがあり、それはこの映画の趣旨からして「ある程度理解はできる」ものの、現在の人権感覚(2022~2023)から照らして、「何がどうなってるの?」ということになります。

 ・ 個人が思想良心として思うだけであれば否定はできませんが、それが発言にあらわれると、他の人権との衝突が発生しますので一定の制約を受けます。要はそこにつきます。

 (減点なし/参考/障がい者の学習権について)

 ・ 1979年(昭和54年)まではそもそも障がい者に対する教育施設の受け入れが進んでいなかったという事情もあり、「就学免除という名の就学拒否」がまかり通っていた時期があります。1979年を境に学校または養護学校(当時)への入学ができるようになりました。文科省の統計でも「就学免除」が1979年を境に激減しているのは、こうした事情によるものです(ただ、本映画でも描かれるように、一般学級に入った後も養護学校や、一般学校の中のいわゆる通級教室に通うことを推奨されたりと、まだまだ流動的な時期だったのが当時でした)。

yukispica