劇場公開日 2022年6月17日

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「今だからこそ、考えるべき作品」PLAN 75 ベーコンえっぐさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今だからこそ、考えるべき作品

2024年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

知的

TVドラマで話題の磯村勇斗 さん&河合優実 さんが共演していることを思い出し、再度鑑賞。
近い将来、加速度的に進む超高齢化社会の中で、増え続ける高齢者対策として「75歳になったら自分で死を選べる法律」が出来た。「生きたい」気持ちと誰にも受けれず「見捨て」ていかれる現実のはざまで、主人公はプランに参加を決めるが・・・
という物語を倍賞千恵子さんが文字通りに体当たりで演じている。
映画は、理不尽な世の中に対して声高に訴えることもなく、老人たちの日常を淡々とつづって描いています。余計なセリフも派手なBGMもありません。最近はやりの大どんでん返しも伏線回収もありません。「この後どうするのだろう」という疑問を投げかけて映画は幕を下ろします。
大方の若いレビュアーには理解不能な作品かも知れません。予想通り「セリフがない」「主張が見えない」「暗い」「現実味がない」・・等々のレビューが散見されます。「老い」と「死」をまだ遠くに感じて、元気な老人たちしか知らない若者には違和感しかないと思います。でも、まもなく定年する私のような人間からみると、主人公が追いつめられてプランに参加していく過程が本当に恐ろしく感じます。
 プランに参加した老人たちの映画の中での遺体の扱いが、このプランの真の狙いを表現していて、また恐ろしい。「自ら死を選べる」ではなく「死を選ばざるを得ない」状況を作っているのだと理解するのです。
 暗く重い物語の中で、若い三人(磯村勇斗 さん&河合優実 さん、ステファニー・アリアンさん)の苦悩が、わずか一筋の光として救いとなります。特に河合優実さんの「先生」は出番は少ないものの、素晴らしいです。
 現実味がない。と感じたひとはどういう現実を見ているのか。今こそ向き合わなくてはならない命題が、ここにはあると思います。

ベーコンえっぐ