劇場公開日 2022年4月1日

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「英雄は民衆に創られ、棄てられる。」英雄の証明 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0英雄は民衆に創られ、棄てられる。

2022年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

作品全体でこちらを見事に翻弄してくれます。導入部からあれよあれよと転がる石のように事態が変わっていく様はまさにピンボールの玉。弾かれ飛ばされ運命が目まぐるしく変わっていきます。
主人公がほんのちょっとの「あわよくば」の気持ちや、変わってきた潮目に対して「欲」を出し始めちゃってからがまぁ見ものなんですよね。人間の性(さが)や業(ごう)のオンパレードで。あぁ、人間ってなんとまぁ哀しい生き物なんでしょうね。そう、主人公や彼を取り巻く人々含めて「THE 人間」なんですよね。

本作のテーマは日常的に素行不良の人がちょっと親切したらめちゃくちゃ評判が良くなる・・・・ってのと根本的に似ている気がするんです。素行良好の人と同じことをしているだけなのに世間が勝手に貼ったレッテルと真逆なことをすると本人は何も変わってないのに、周りが勝手に判断して持ち上げちゃうってのと。で、調子に乗ったら梯子外されちゃっって感じ。踊るのが人間なら踊らせるのも人間(世間)。

世間なんて面白ければ飛びつくしヤバくなったらすぐに他人事。そう、結局は目の前の得が欲しくて、自身のプライドと体裁と利益しか考えてない。自分のこと以外は責任取る気すらない・・・けどね、それが人間って生き物なんじゃぁないかなぁ、無慈悲なこの世論というモンスターの中を泳ぎ切る人ってさすがですよね。ですが、主人公のラヒムはただの人で、流されていただけ。さらに、そもそもどこか他人事。他責にしたがることが全ての元凶に思えてならないですね。よく言えば世間に弄ばれたですが、僕には身(本性)から出た錆にしか見えないんです。本性は変わることがないのにそれを見ずに調子に乗ってしまった結果が・・・ラストかなぁと。

誰のせいでもなく自業自得だよなぁって思います。

バリカタ