劇場公開日 2021年5月15日

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「静かな、焦れったい映画」アララト 誰でもない恋人たちの風景 vol.3 Boncompagno da Tacaocaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5静かな、焦れったい映画

2021年5月27日
iPhoneアプリから投稿

画家を志して仕事を辞めたが、若くして半身不随になった夫とそれを支える妻の物語なので、作品のモチーフとなっているオリーブの木のように静かにストーリーが進む。描き方によっては劇的になるはずの出来事すら静かに進行する。
半身がまだ使えるなら、早く画筆を取って妻のヌードを描けよと男に言いたくなる、焦ったさが全編に渡ってある。この映画に見る価値があるとすれば、それは主演の行平あい佳の演技に尽きる。清楚な顔立ちで、夫に尽くす健気さが見ていて切なくなるし、触れ合いがテーマの映画なので重要なセックスシーンも体を張って好演しているし、カメラもそれを美しく撮っている。
一方、半身不随と言っても症状は色々だろうが、私が知っている例はもっと顔が歪み、行動ももっと不自由だったので、夫が喋り過ぎで、半身不随とは思えない感じがあり、そこに感情移入ができなかった。健常者が演じるのは難しい役だが、正直なところ、夫の姿への違和感がこの映画に高評価を付けにくい材料である。

Boncompagno da Tacaoca