劇場公開日 2021年1月29日

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「地味な割に飽きさせない巧い構成」心の傷を癒すということ 劇場版 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0地味な割に飽きさせない巧い構成

2021年2月4日
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鑑賞方法:映画館

原作は未読。在日韓国人の精神科医が幼少期から医師となり地域で活躍する姿を描いた実話ベースの物語。
精神医療の現場の話がメインなのかと思いきや、安先生のルーツやアイデンティティ、奥さんとの出会い、家族との関係といった部分が意外と多かった。それは嫌なことではなく、逆に安先生の人となりが丁寧に描かれていてとてもいい効果になっていたと思う。
被災地での活動や実際の診察場面なんかの描写が物足りないのは精神科医の難しいところ。そこがどれだけすごいのかなんてのはたぶん映像化できないんじゃないかと思う。外科手術とかは速い!正確!判断が的確!とかを表現しやすいけど、精神医療ではこんなアドバイスしたから劇的に改善した!なんてことは起きそうにない。だからこそ安先生の人柄がポイントなわけで、いろんなことに誠実に向き合い、精一杯生き抜いたということが十分に伝わってきた。
地味でおとなしい話なのにテンポよく進み飽きさせないのは素晴らしい。説明的なシーンでの場面転換(年数の経過や阪神大震災発生、父が亡くなるシーン、子どもたちの成長等)がとても上手で観やすかった。
それにしてもヤクザと家族に続いて、尾野真千子がいい役を演じていた。今年は彼女の当たり年なのか?

kenshuchu