配信開始日 2020年12月18日

「差別の源流」マ・レイニーのブラックボトム コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5差別の源流

2021年5月3日
PCから投稿

いかにも舞台劇、戯曲の映画化で、基本は会話劇。
誰かが誰かをずっと罵っているので、精神衛生的によろしくないものの。
実在の歌手をモデルにし、黒人側から見た今も続くアメリカの差別の源流を実に端的に表現していました。

「ブルース」は19世紀後半に米国南部で生まれたものです。
いろいろな説がありますが、アフリカから持ち込まれたリズムであり、労働のためのかけ声「ワーク・ソング(労働歌)」が形を変えたもの。
己の魂を歌った「黒人霊歌」や、白人の大衆音楽「バラッド 」の影響を受けて派生し、米国英語で黒人の孤独感や悲しみを歌ったものとされると思います。
極端に言えば、一種の「恨み節」です。

ただ、これが米国の黒人社会で受け入れられ市場を形成すると、そのあとには白人の大手レコード会社が曲を作者の黒人から買い取り、白人の歌手とビックバンドでカバーして、「もともと白人の文化でしたよ」といわんばかりに、しれっと「ポップミュージック」として簒奪した歴史を、のちの世に生きる私は知っているわけで。

チャドウィックの演じるレヴィーがどんなに息巻いても、報われないんだろうなあ…
と思いながら観てました。

そして、ここまでストレートに差別を告発するように表現しては、批判的側面が大きすぎて、エンタメとしての魅力がこそぎ落とされていたようにも感じました。

病気で痩せこけていたものの、弱っていることを感じさせないほど熱演していたチャドウィックに、アカデミー章で最優秀主演男優賞を取ってほしかったと思いますが、一方でこの作品では厳しいのかもなとも思いもし。

衣装や小物の美術は素晴らしかったです。

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コージィ日本犬