「理由はどうあれ、犯罪は犯罪。」アメリカン・プリズナー にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0理由はどうあれ、犯罪は犯罪。

2022年6月1日
PCから投稿

死刑囚との対話、という内容で「デッドマンウォーキング」という映画がある。
ショーン・ペンとスーザンサランドンの演技が素晴らしい名作だ。
それとは比べられないが、アプローチは似ている。

最初の接見では、画面は暗め、
表情は伏し目がちでよく見えない。
カメラは鉄格子のコチラ側から
引き気味のアングル。
この鉄格子の使い方がうまい。
死刑囚と接見者の間の「壁」を表している。
話が進むにつれて、二人のアングルも
引き気味から水平カット、
アップ寄りになっていき、
死刑囚の気持ちに寄り添うようになっていく。
しかし、本当に死刑囚に寄っていいものかという葛藤もある。
カメラがイマジネーションラインを越えることで
その心の揺らぎを表現。
ちなみにタイラー博士の服装は黒。

最終的には、
カメラは鉄格子の中に入り、
アングルはほぼアップ。
顔には照明があたり、表情を読み取れる。
すでにタイラー博士は鉄格子に顔をぴったり
近づけて死刑囚に完全に同調している。
ちなみにタイラー博士の服装は赤。
死刑囚の囚人服と同じ色だ。

と、表現方法を書いたが、
これがあまりにあからさまで、逆に興覚め。
デッドマンウォーキングはその辺の表現が
絶妙で巧みだった。
2つの映画に出ている役者の演技力も含め、
アプローチの手法は似ているが、
完成した作品は雲泥の差がある。

この映画が死刑制度に賛成なのか反対なのか?
どちらにせよ、死刑をこんなにキレイな映像で
描いてはいけないと思う。

賛成派、反対派、両方の矜持を汚している
ように思えてならない。

にゃろめ