劇場公開日 2019年9月27日

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「命がけのハイドアンド・シーク」ホテル・ムンバイ N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0命がけのハイドアンド・シーク

2021年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

無差別同時多発テロにより、インドの豪華ホテルが襲撃、占拠された。
従業員と宿泊客は助かるのか。
実話ベースもの。

実話だけにテロリストが容赦ない。
そして対峙する勇猛果敢なヒーローも登場しない。
登場する誰もはごく普通の従業員であり、宿泊客らだ。
ゆえにバッタバッタと殺されてゆく様は見ていてつらく、
現実はこんな具合なのだろうなと思わされる。
ジハードを盾にテロを仕掛けるテロリストらへは、もちろんハラワタが煮えくりかえるのだが、
同時に彼らも、そう吹聴する首謀者の犠牲者として描かれており、
勧善懲悪に徹することのできない現実的なニガさも作品にエッジを効かせていた。

十年以上前に起きた事件ということだが、
世の中はちゃんと変われたのだろうか、と思わずにおれないし、
あまり変化はしていないよな、と周囲の危うさを見回してしまう。
欧米とイスラム、互いの文化を尊重し合うシーンが挟まれている本作。
ありきたりなそのシーンが、とてもヒリヒリするものとして感じられてならなかった。

見ようによってはホテル従業員らを讃えるハラハラドキドキの脱出劇だが、
全編は実際にあった悲劇を忘れず教訓とするため撮られた映画ではないか、という印象を受けた。

N.river