劇場公開日 2019年6月15日

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「秀逸なアイデア」青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0秀逸なアイデア

2019年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

映画の前半、音楽を全く使っておらず、なかなか強気な演出をしているなと驚いた。TVシリーズも淡々とした演出(と淡々とした日常風景に不思議な現象が起きる対比)が特徴だった作品だが、前半の静けさが後半の嵐のような展開を上手く引き立ていて、演出プランがすごくよく練られていると思った。高校生が命の選択をしなければならない理不尽に自己犠牲で応えようとするのを許さない展開も良かった。
全てを救うことができなくても決断しなくてはいけない。そのつらさを引き受けることが成長につながる。この映画の結末はもしかしたら甘いのかもしれないが、個人的には好きだ。頑張ってつらい決断をした登場人物に対して、ご褒美があってもいい。世の中は理不尽だけど、理不尽なことばかりじゃないと信じたい。
思春期の症候群というアイデアは、等身大でありふれた悩みも、悩んでいる当人にとっては大問題であることを表現するための見事な手段だと思う。気持ちの良い青春映画だった。

杉本穂高