劇場公開日 2017年11月3日

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「ゴッホを求めて」ゴッホ 最期の手紙 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ゴッホを求めて

2018年8月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

手書きやCGのアニメーションの圧倒的な映像美やハイクオリティーさには目を見張らされるが、斬新さや驚きは稀。
しかし、本作は違う!

油絵が動く!
役者の演技に油絵を合成。
100人以上の絵描きと7年の歳月という労力と時間をかけただけあって、完成した画は“こんなアニメ見た事無い!”。
1コマ1コマ、芸術作品を見ているかのよう。
回想シーンはモノクロの油絵であり、こちらもユニーク。

画の表現法が先になってしまったが、本作の題材は…、
ゴッホ。
“動く油絵”は、彼のタッチの再現とリスペクト。

話は変化球。ゴッホの伝記物語ではなく、
拳銃自殺したゴッホが弟に宛てた手紙。
ゴッホの友人だった郵便配達の父からその手紙を託された息子が、ゴッホの死の真相に迫る…。

恥ずかしながらゴッホが自殺した事は初めて知ったが、ゴッホが生前評価されず、死後評価された事は知っている。
それ以外でも、ゴッホの人生は苦難の連続。
母には愛されず。
親の期待に応えようとするも、多くの職を転々。
画家となって才能を発揮するも、当時は異端の存在。
周囲や子供からも変人扱い。
唯一弟だけが理解し支えてくれたが、やがて精神を病んでいく…。

主人公の青年がゴッホの死の謎を調べていくと、ゴッホと親交あった人々の証言に矛盾が生じる。
ゴッホの本当の素顔とは? 何故彼は自ら命を絶った?
ゴッホの死の直前を知る医師に辿り着き、彼から明かされた真相とは…。
手紙に込められた思いとは…。

ゴッホの死は今も謎に包まれている為、本作の真相は本作だけの仮説。
創作として筋は通っているようで、悲痛でもあるが、それが直接死に繋がったか、ちと動機が弱い気もした。
登場人物も多く、カラーとモノクロで色分けしているも、現在と過去交錯し、なかなか複雑。
が、ゴッホと近かった実在の人物やゴッホの謎に迫る内容は、ファンには堪らないだろう。
いつぞやの『名探偵コナン』の映画でゴッホを題材にして“アート・ミステリー”なんて言った割りにそうでもなかったが、本作は話に面白味もあり、興味深くもあり、アートとして堪能も出来、これぞ本当の“アート・ミステリー”である。

日本で言ったら、葛飾北斎のあの独特のタッチの画が動く。
それはそれで見てみたい。

近大