劇場公開日 2017年5月13日

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「路上ミュージシャンの野嵜好美。ガンバレー」映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0路上ミュージシャンの野嵜好美。ガンバレー

2020年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 『ジャーマン+雨』(2006)で主役を務めた野嵜好美。かなり痛い役柄でリコーダーを吹いていたというイメージしか残ってないのですが、今作では所々路上でエレキギターで歌っているという風変わりなストリート・ミュージシャンだった。彼女だけを切り取ってしまえば、そのままスピンオフの映画も作れそうな強烈な印象を与えてくれた。

 TVで放映されたわけでもないのに、タイトルに“映画”とついているのが不思議だと思いつつも、ストーリーそのものも人生観、死生観を感じさせる詩的な映像表現になっていた。こうして、生きることの辛さ。また、死への恐怖を描き、田中哲司が仕事を頑張りすぎたために死んでしまうんじゃないかと思っていたが、彼の立場としては全く逆の生きる様を演じていた。

 都会で孤独に過ごす者にとっては多分田舎人にはわからない共感があるのだと思うし、夢を求めて田舎を飛び出した割には、結局夢が何なのかもわからないほどにただ生きている姿。テレビも無さそうだったし、新聞をとっているわけでもない。ネットのニュースに依存しながらも、知らないことだらけの世の中。知らないことがあるから怯え、そして笑う。左目が見えない慎二にとっては逆に幸運?いや、だからこそ何かを追及したくなるに違いない・・・

 “愛”という言葉には血の匂いがすると美香は言う。元カレもそうだし、世の中の嘘や欺瞞がみなそう映る。そして、“捨てられる”という意味をも曲解し、捨て犬のアニメーションが痛く映し出される。一方、慎二には身近な人が死んでいく現実を見てさらに鬱屈していく。ただ、そんな二人が出会ったことで何かが変わるハズ!孤独死なんてしたくない。ともに生きる者がいれば、それだけ見る目が変わるんだから・・・

kossy