劇場公開日 2017年12月1日

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「言われてるほど悪くはないけれど」鋼の錬金術師 flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0言われてるほど悪くはないけれど

2017年12月2日
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鑑賞方法:映画館

原作はハリー・ポッターシリーズもナルニアも上橋菜穂子も差し置いて、ハイ=ファンタジーの最高峰の1つ、とまで思っているので、実写映画化には嫌な予感しかしなかった(笑)

で、いざ観てみると、ここで酷評されているほど悪くはなかった。
少なくとも役者は(一部を除いて)きちんと演技をしていて映像も綺麗でCGのレベルも高い。そういう意味では破綻なくまとまってるんだけど…
でも拭えないガッカリ感は何?

まず役者だけど、やはり危惧したとおり、そもそも日本人俳優のキャスティングが無理。
監督は「エドとアルの兄弟愛など、作品の根底に流れるのは非常に日本人的な情感なので…」などと説明して「日本人以外には兄弟愛はないってのか」って叩かれてるけど、素直に「予算がなかったから」って言いなよ(笑)
そもそも舞台となるアメストリス国は軍人がトップの軍事国家で、国家錬金術師も軍属で「人間兵器」という設定だったはず。日本人的情感からはかなり遠い価値観が根底に流れてるんだけど。
それに何より、舞台が日本離れした風景なので(イタリアでロケしたらしい)、その中で日本人がわらわらと出てくるのは違和感が炸裂。

キャスティングは最も危惧した本田翼のウインリィは意外に良かった。
初登場からしばらくは原作のウインリィのイメージを引きずりながら見ていたので違和感があったが、ちゃんと本田翼なりのウインリィになっていた。
特に原作にもある、アルが自分の実存を疑ってエドと対立するシーンでは、これなら本田翼がウインリィで良かったんだ、と納得。

エド役の山田涼介も、バカにしてて申し訳ない、と思うほど、ちゃんとエドをやっていた。

ピカイチだったのは松雪泰子のラスト。
これはもう原作のラストを見ても松雪泰子のラストが浮かぶほど、ラストそのもの。この映画を救ったのは松雪泰子、と言っても過言ではない。

あー、でも日本人が外国名で名前を呼ばれる度に蓄積する違和感が(笑)

ディーンフジオカのマスタングだけはコレジャナイ感が強かった。
修羅場をくぐってきた凄みも腹に野望を含んだ臭味も感じない平板な演技で、ヒューズの仇であるエンヴィーと対峙した時の「己を焼き尽くすだろう」とまで言われた環状の高まりも感じなかった。
ディーンフジオカは、これまでも「こいつ、あまり上手くない…?」って思ってたけど、本作で自分的に大根役者確定(笑)

で、役者はなかなかで映像もきれいなのに、この映画をガッカリ感たっぷりに仕上げている最大の要素はシナリオ。

原作未読者には多分訳が分からないほど説明不足で、そこまで端折った割に、エピソードの繋ぎが悪くてリズム感が悪い。
例えば、タッカー宅からマルコーの診療所に行き、第五研究所の情報を得たというのにタッカー宅に戻ってキメラのエピソードに入ってしまう。見てる方はいちいち頭を切り替えなくちゃならない。

ハクロとタッカーについては映画オリジナルの役割を持たせているけど、「本筋」との繋がりが何も考えてない感ありありなので、クライマックスではホムンクルス側とエド側の利害が一部一致してしまうという笑うしかない展開に。
タッカーもあそこまでやらせた割に、その動機が「締め切りまでに何も考えつきませんでした」的な(笑)

あと、続編作るつもりあるの?
どのみち1作でできるわけないのだから、最初から3部作前提くらいのつもりで作っていれば良いのに、と思うのだけど、それだったらお父様やホーエンハイムあたりもチラッとでも出しておくべきだったのでは。
本作のみで終わらせるつもりであれば、ホムンクルスの背景が何一つ語られていないのはあり得ないし、作るつもりだったのなら大事なキャラを無造作に殺してしまっているのはもったいない。
(エンドロール後のあのシーンは続編の可能性をぷんぷん匂わせてるけど笑)

ま、続編作るなら、今度こそもう少しまともなシナリオを期待するよ

flying frog